自民党総裁選は2021年9月17日に告示され、河野太郎行政改革相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4人が立候補を届け出た。野田氏は9月16日に正式に出馬表明したばかりで、90秒の「ぶら下がり」取材による出馬会見では具体的な政策も明らかになっていなかった。
政策は9月17日の演説会や記者会見で初めて明らかにされ、他の3人と比べて「独自路線」が際立った。例えば、森友学園をめぐる公文書改ざん事案の再調査問題では、唯一再調査に前向きな姿勢を示した。野田氏をめぐっては、出馬が確定したことで票が分散し、決選投票にもつれ込む可能性が高まることが指摘されてきた。仮に野田氏の主張に共感する党員が多ければ、さらにこの傾向は強まることになる。
コメントを避けたり、再調査不要と明言したり、「説明」強調したり...
記者会見は、記者の質問に対して各候補者が順番に回答する形式で行われた。森友問題の再調査について、野田氏は信頼回復の必要性に言及した。
「公文書の偽造、改ざん、廃棄、これは絶対にあってはならないことだ。それが起きてしまい、それに関わった方が命を落とすという事実がある。これについて多くの国民が納得していない中で支持率の低下がある。信頼がなくなっている。それをやはりしっかり回復するためには、私たち自らが党にあって、起き得ないことが起きたことは、しっかりと知るべきだと思う」
その上で、信頼回復の手段として再調査が必要だとの見方を示した。
「そこで反省し、二度と起きないようにする、そういうことでアプリオリに(前提や条件なく)調査をする必要があると思っている」
他の3候補は、コメントを避けたり、再調査は不要だと明言したり、再調査には直接言及せず「説明」の必要性を強調したり、三者三様だ。
高市氏は、公文書改ざんについては
「文書の改ざん、パワハラは、あってはならないこと。全府省庁徹底して根絶する、こういった改革に取り組んでまいりたい」
などと再発防止を訴える一方で、再調査については訴訟を理由に言及を避けた。
「現在、ご遺族が国などを相手取って、確か提訴していらっしゃる、そういった状況にあると思っているので、この件についてはコメントができない、するべきではないと考えている」
演説会では党員・議員に「反省と検証」提起
河野氏は、意思決定のプロセスを説明することに重点を置いて答弁した。
「公文書の管理がしっかり行われるというのは、外交・安保だけではなく、内政面でも非常に大事なことだと思っている。確かに、今話題になった様々な問題、あるいはコロナ対応、あるいは五輪・パラリンピックの開催方式など、『なぜそういう判断をしたのか』というところを、もう少ししっかりと説明をして、少なくとも決定について背景を理解いただくというのは大事なことだと思う」
再調査については次のように話し、明確に否定した。
「もう、さまざま司法まで上がっているものですから、再調査の必要はないと思うが、関係された方の心の痛みには、やはり政治として向き合わなければいけない、そういう部分は確かにあるだろうと思う」
岸田氏は、「説明」することの重要性を繰り返しながら、再調査については否定的な見解を改めて示した。
「この問題については、行政において調査が行われ、報告書が渡されている。司法においても検察の調査が行われ、裁判が行われている。こうした行政・司法においてさまざまな調査・報告が行われているので、その上で、国民の皆さんの納得感ということで足りないことがあれば、政治の立場から丁寧に『説明を』していきたいと思っている」(岸田氏)
記者会見に先立って行われた所見発表演説会でも、野田氏の独自路線が際立った。野田氏は3人の中で唯一、議員と党員に対して「我が身を振り返る」ことや「反省と検証」を提起。実現できていない議員定数の削減問題を挙げながら、「国民に約束をしていて実現できていない政策を洗い出し、なぜできていないかを考える」ことを求めた。
野田氏は問題提起の意図を、次のように語った。
「与党として、しっかりと国民の期待に応えていたのか。そして今、信頼が低下してしまっているのはなぜなのかということを、議員ひとりひとりがしっかりと向き合う。それをやってから、初めて新しいことに手をつける、改革に着手する意味があるのではないか」
総裁選は9月29日に投開票される。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)