色を変えたからいいという場合は「あり得ると思います」
本件が著作権侵害にあたる場合には、どのような罰則が考えられるだろうか。
「まず、著作権者はスーツの利用等の差止請求をすることができます(著作権法第112条1項、2項)。
加えて金銭的な請求としては、無断で著作物を『翻案』されたことを理由に、『翻案』の際に請求できる翻案許諾料を請求することができます。こういう形での翻案はあまり許諾されないと思いますが、作品の関連商品を作成するときのライセンス料は請求額の参考にはなるかもしれません。
刑事上の罰則としては著作権法119条1号より著作権を侵害した者には十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処せられる可能性があります。懲役と罰金は併科される可能性があります」(正木弁護士)
ソルディアの報告書では、著作権について「『色を変えたから良いのではないか』という甘い認識」があったと記述されていた。著作物の色だけを変えることで著作権の侵害をまぬかれる事はあるのだろうか。
「ケースバイケースですが、色を変えたからいいという場合はあり得ると思います。著作物が法律上保護されているのは、創造性が認められるからです。逆にありふれたものであるなら、著作権法上保護されません。
仮に創造性の大部分を色に依拠した作品があるとします。言い換えれば、色の部分以外は極めて一般的なもので、創造性を認められるほどのものでないが、色の使い方が極めて特徴的であるなら、色使いの創造性を主な理由として、創造性が認められることは考えられます。
その場合、色をありふれた色使いに変更した場合、本質的な特徴の部分を模倣したことにはならないため、著作権違反にはなりません。もっとも、著作権法以外の法律に触れる可能性はありえます」(正木弁護士)
また本件が触れうる著作権以外の法律について、正木弁護士はこう述べる。
「仮に今回の行為が著作権侵害にあたらない場合でも、特にゼロワン・アギトと形状が似ていることは否定できません。商品化の際にゼロワン・アギトと混同するような商品の作り方をした場合、不正競争防止法の『不正競争』(第2条1項、同項1号)に当たりうるのではないでしょうか」(正木弁護士)