人気作「サメフライ」「唐揚げ工務店」の開発秘話
「サメフライ」の企画(原案)・デザインを手掛けたのも、唐揚げ工務店を生み出した伊藤さんだ。「パンダの穴」を立ち上げる2年ほど前、別の企画を練っている際にメモしていたのが「サメフライ」の構想だったという。
「全く別の仕事で長めの打ち合わせをしていた時に、企画の絵を描いたり手遊びしたりする中で、何となく描いたのがサメフライの原案だったんです。頭の中が変な方向に進んでなんとなく落書きしたものではありますが、『パンダの穴』を立ち上げる際にタカラトミーアーツさんにプレゼンしたら気に入っていただき、商品化する運びとなりました」
サメフライはインターネット上を中心に大きな注目を集め、大ヒット。そこで、引き続き「揚げ物」に関連したシリーズを作ることになった。そうして生まれたのが唐揚げ工務店だが、当初は違うものを連想していたそうだ。
「揚げ物を連想していったときにまず頭に浮かんだのは『豚カツ』でした。
そして、何気なく昔から好きだった重機を揚げてみたら面白そうかなと考え、ラフ画を書き始めてみました。重機から、重量の単位である『t(トン)』をかけた『カツ』です。だから仮名称は『tカツ』だったんです」
電通テックのクリエイターが考えた企画は、タカラトミーアーツによって立体物に仕上げられる。
揚げる前の「重機」の再現度も高い。「唐揚げ工務店」制作にあたって、タカラトミーアーツはまず、重機の専門家を招きリアルな重機のフィギュアを制作した。伊藤さんから見れば「このままガチャにした方が良いんじゃないか」と感じるほどだったそう。
続いてこれらの試作品に、どのように「衣」をつけるべきか考えた。揚げ物としてのリアリティを追求するために様々な店の食用の揚げ物も用意し、イメージを膨らませていったという。唐揚げ工務店については、色味や衣の見た目のバランスから、「高めのカツ屋さんの揚げたてのもの」を参考にしたそうだ。
「ものすごく精巧に作られた重機のフィギュアを台無しにするような作業でした(笑)
拘った点は美味しそうに見えるか、何の重機を揚げているかを分かってもらえるかですね。カプセルに入るサイズの制限もあるので、小さな世界の中で、重機のち密さと揚げものの美味しそうな雰囲気のバランスが両立するものをめざしました」
最終的に試作品が出来上がってみると、トンカツよりも唐揚げらしくなってしまったため、発売直前になって「唐揚げ工務店」と名を改めたそうだ。
こうして出来上がった唐揚げ工務店やサメフライはインターネット上を中心に長らく愛されている。7年以上にわたり「面白さ」が色あせないのは、その開発姿勢にも理由がありそうだ。