「それはね、民主党がパクったんです」 岸田文雄氏が「新自由主義からの転換」を掲げる理由【インタビュー】

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従業員の給料カット→会社が立ち直って経営陣にボーナスが出る世界

―― では、今の新自由主義では何が起こっているのでしょうか。

岸田: 市場原理、その競争効率や利益重視の新自由主義の経済では、「株主資本主義」と言っていますが、結局経営者と株主が全部独占してしまいます。例えば米国のアメリカン航空は07年に破綻の危機に陥りましたが、従業員の給料を340億円カットしました。これで会社は立ち直り、経営陣は200億円を超えるボーナスを受け取りました。これが新自由主義です。こんなことをやっていたのでは、ますます利益は一部に集中してしまいます。やはり分配というのは、一部の人間の給料だけ上げるのではなく、みんなの給料をそれぞれ上げる。今はこういった新しい資本主義を考えないと...。アベノミクスでドンと成長させる。これは大事ですが、成長の果実を分配する仕組みも考えてあげないと、みんなの給料は上がりません。

みんなの給料が上がるとどうなるか。昭和30年代後半、まさに我々宏池会が池田内閣の所得倍増論を唱えていた頃です。まだみんな貧しかったですが、格差はありませんでした。みんなの給与をできるだけ幅広く上げて何が起こったかと言えば、テレビをはじめ、三種の神器、電化製品、新三種の神器...、これがバンバン売れて、そして経済が回りだしたわけです。今回の令和時代においても、みんなの給料を幅広く上げるという経済政策で経済を回していかないと、格差がどんどん広がって、政治も不安定になります。経済の好循環もできません、ということになりかねません。成長の部分はもちろん大事ですが、成長だけでは駄目です。これが新自由主義からの転換という大きな意味だと思っています。

―― 新自由主義を批判する文脈では、企業の「内部留保」を取り崩すとか法人税を高くする、といった話が出てくることが多いです。今回のプランでも、そのようなことを念頭に置いていますか。

岸田: 株主が全部独占するんじゃなくて従業員にもそれを振り分けてくれ、ということです。それが企業における分配ですし、それから大企業と中小企業の関係も重要です。大企業が全部利益を独占してしまうのではなく、下請けいじめを防ぐいろいろな法律があります。その法律のもとに、大企業と中小企業がしっかり利益を分配して、給料を上げてもらうとか、いろいろな仕組みを通して新しい時代の経済を考えていかなければならないと思っています。

―― 安倍政権では、経済界に対して賃上げを働きかけたりもしていました。こういった取り組みは、引き続き重要だと思いますか。

岸田: そうですね。ただ、「頑張れ頑張れ」だけでは仕方がないので、「そうしないと経済が回りませんよ。そうしたら大企業も困るでしょう。だから経済回すために協力してもらえば、経済が回ってあなたたちも儲かります」、そういう説明をしないといけないでしょうね。
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