「それはね、民主党がパクったんです」 岸田文雄氏が「新自由主義からの転換」を掲げる理由【インタビュー】

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「みんな10万円配るということについて理解をいただけるかも含めて検討」

―― 経済対策についてうかがいます。9月6日の週刊ダイヤモンドのインタビューでは、30兆円超の補正予算を編成して新型コロナの経済対策にあてることを明らかにしています。関心事は、その用途だと思います。9月8日の記者会見でも若干話題になりましたが、1人10万円の特別定額給付金が再給付される可能性についてはいかがですか。

岸田: 一律に配ることは否定はしません。しかし、今、史上最高益の利益を上げている人と、ほとんど収益のない人と、みんな10万円配るということについて理解をいただけるかも含めて検討しています。ただ、現金はしっかり配りたいと思います。

―― 1回目の給付の時には、配る対象について一悶着ありました。

岸田: 当時は全国に緊急事態(宣言)が発令されました。コロナの影響がまだどうなるかわからない、という状況でもありました。今はあれから1年半経って、大IT企業や、巣ごもり需要で儲かってる人たちは史上最高益を上げている一方で、まだ観光や外食、宿泊は惨憺たる状況です。これだけの状況の中でどうやって配りますか、みんな一緒に配りますか、どうしますか?という話ですね。バリエーションはいろいろあると思います。困っている人にはしっかり現金を配らなければならないと思っています。今の政府は、そこにまで踏み込んでいません。

―― 9月8日の経済政策の会見で驚いたのが、「新自由主義からの転換」を掲げていたことです。「新自由主義」という言葉は、野党が政府の政策を批判する文脈で使われることが多いからです。例えば、立憲民主党の枝野幸男代表の著書「枝野ビジョン」(文春新書)には、Kindleで検索すると29回も「新自由主義」が登場します。記者会見では「令和時代の中間層復活」をうたっていますが、かつての民主党は「分厚い中間層」という表現を使っていました。

岸田: それはね、民主党がパクったんです。我々、宏池会が昭和30~40年代、それを一生懸命言っていました。最近、民主党からそういう声が出てくるから、我々宏池会としては複雑な思いで見ておりました。ぜひ、歴史を見てください。昭和30~40年代に、分厚い中間層、まさに池田内閣の所得倍増論...。我々宏池会が一生懸命訴えていたワードであります。

―― ある意味、オリジナルに回帰するということなのでしょうか。

岸田: ぜひ、歴史を振り返っていただきたいと思っております。

―― 記者会見でアベノミクスについて「評価する点はたくさんあった」とする一方で、「新自由主義からの転換」を掲げることは、これまでの自民党の政策を否定するともとれます。あえて踏み込んで打ち出した理由を教えてください。

岸田: よく見ていただきたいのは、成長と分配の両方が必要だと言っている点です。アベノミクスは成長の上で大きな意義がありました。しかし、その新自由主義のもとで何が起こったか。例えば子どもの貧困。この日本ですら7人のうち1人の子供が貧困で、子ども食堂というものが全国に展開していく、こういった状況になっています。そしてコロナが追い打ちをかけて、先ほど話した「史上最高益」と「どん底」は、ますます格差が広がってきました。

それ(コロナ禍)が終わった後、また経済のエンジンを回す。従来と同じことをもう1回やったら、その格差をさらに広げてしまいます。国が分断すると、どういうことになるか。米国ですら分断されると、民主主義の象徴である議会に押しかけて破壊してしまう...、こんな状況になってしまいます。このまま分断をし続けたならば、我が国の一体感は維持できません。やはり格差が開いた後、経済を回すときは、アベノミクスの基本的な考え方を大事にしながら成長させ、それを分配する。分配するとはどういうことかと言うと、みんなの給料を上げることです。
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