目指すリーダー像は「疲れている心に寄り添う、対話の中から協力を引き出していく」
―― 前回の総裁選は何が敗因だったとお考えですか。どこが「力不足」だったのでしょうか。8月26日の出馬会見では、国民の声を記したノートを示すなどしていました。どのような形で政策なりをバージョンアップしたのでしょうか。
岸田: 前回出たときは、安倍総理の急な退陣ということで、急遽選挙になりました。私が出馬表明してから投票日まで2週間ちょっとしかありませんでした。昨年を振り返ると、コロナ対策であったり、自民党改革であったり、具体的な政策もちろん打ち出しましたが、もっと心に響くような具体的な政策を打ち出す時間的な余裕もありませんでした。これは大変大きな違いだと思います。さらに去年の反省としては、やはりもっと強く「総理は自分しかない」という強い思いをしっかりと出していくことは大事だったと思っています。
その点、今回は出馬表明から5週間あります。ご案内の通り出馬会見の後、まずコロナ対策、経済対策、来週は外交安全保障について(記者会見を)開くと思いますが、政策をしっかりと国民に向けて訴えることを大事にしていきます。さらに「総理は自分しかない」という思いも、1年間いろいろな方の声を聞いていて、多くの国民の皆さんが、このコロナとの戦いで気持ちや心が疲れていると感じています。こういったときには、どういうリーダーが求められるのか。疲れている国民に「頑張れ頑張れ、俺について来い」というようなリーダーがふさわしいのか。それとも、疲れている心に寄り添う、そして対話の中から協力を引き出していく、国民とともに努力する姿を見せる、こういったリーダーが求められるのか。やはり私は後者を目指すわけですが、「こういった時代はそういうリーダーが求められるんだ。だから自分の出番なんだ」、そういう思いを強く持っています。この2つについて、今回はしっかりと反省して具体的に取り組んでいるところです。
―― 今回の総裁選では大きく「コロナ対策」「経済政策」「外交・安全保障」の3つを政策の柱として打ち出しています。そのうちコロナ対策では、(1)医療難民ゼロ(2)ステイホーム可能な経済対策(3)電子的ワクチン接種証明の活用と検査の無料化・拡充(4)感染症有事対応の抜本的強化の4つを打ち出しています。特に重要だと思うのが、(2)に「人流抑制などの政府方針に納得感を持ってご協力いただくため」と打ち出していることです。新型コロナ対策では経済活動とのバランスが必要な一方で、今は人流抑制の側面が強く押し出されている、という指摘もあります。西村康稔経済再生担当相、政府分科会の尾身茂会長による体制をどうすべきだと思いますか。新内閣でも、お二人に引き続いて頑張っていただきたい、といったところですか。
岸田: お二人に...というか、私が総理になったとき誰が大臣をやっているか分かりません。政治と専門家の連携は大事です。
―― 総理になってみないと何とも...、といったところでしょうか。
岸田: 当然ですね。人事というのは戦いの中の大変重要な部位ですから、最初からそれを晒すような愚かなことはしません。