千葉県警が公開していた交通安全啓発を目的とする動画が、苦情を受けて2021年9月10日までに削除されたことが分かった。
動画では、仮想キャラクター「バーチャルユーチューバー(Vチューバー)」を起用していたが、不適切との指摘が寄せられたという。
全国フェミニスト議員連盟が抗議
動画は、7月中旬に県警のツイッターとユーチューブに投稿された。
千葉県松戸市のご当地VTuber「戸定梨香(とじょうりんか)」を起用し、自転車の交通ルールを呼びかける内容だ。同キャラクターを管理するArt Stone Entertainment(松戸市)、松戸警察、松戸東警察が交通安全啓発動画に関する協定を結び実現した。
協定の模様は、「Vチューバー、交通安全啓発 松戸署など動画公開」(朝日新聞)、「交通事故防止へ 警察とVチューバーがタッグを組み動画制作」(千葉テレビ)、「警察署長とお友達!? ご当地キャラクターとVTuberが松戸トーク 戸定梨香×ばけごろう」(千葉日報)など複数のメディアで取り上げられた。
しかし、動画は9月10日までに削除された。前日には、Art Stone Entertainment代表の板倉節子氏が、動画を削除すると伝えられたとツイッターで明かしていた。キャラクターの見た目が女性蔑視だとして、抗議を受けたためだと説明を受けたという。
【VTuber戸定梨香PR動画が、
— 板倉節子 / Setsuko Itakura (@ASE_Itakura) September 9, 2021
女性蔑視で削除される件について】
フェミニスト議員連盟の抗議から感じたことです。 pic.twitter.com/Zlzo0LN9vm
動画をめぐっては、女性の政治参画を推進する「全国フェミニスト議員連盟」が8月26日、千葉県警本部長、松戸警察署長、松戸東警察署長、千葉県知事、松戸市長、松戸市教育長宛てに抗議文を送付していた。
「絶対にあってはならない」と非難
抗議文では、キャラクターの特徴を
「セーラー服のような上衣で、丈はきわめて短く、腹やへそを露出しています。体を動かす度に大きな胸が揺れます。下衣は極端なミニスカートで、女子中高生であることを印象づけたうえで、性的対象物として描写し、かつ強調しています」
と指摘する。
全国フェミニスト議員連盟のフェイスブックより
公共機関である警察が「女児を性的対象とするアニメキャラクターを採用することは絶対にあってはならない」と非難し、動画の削除や謝罪を求めた。
同文章は9月4日、連盟のフェイスブックで公開された。なお、連盟の共同代表は松戸市議の増田薫氏が務めている。
松戸警察交通課は10日、J-CASTニュースの取材に、動画作成の経緯を「対面での交通安全教育の実施が困難な状況で、自転車の安全利用や反射材の利用促進などを目的に作りました」と答えた。
削除の理由は「使用しているキャラクターが、適切じゃないのではとのご意見をいただいた」と話す。市民らから意見が寄せられたとするも、具体的な内容や数は明かせないとした。
連盟からの抗議文の影響については「詳細は申し上げられない」とし、苦情を受けて警察内でどのような議論をしたかも回答を避けた。
Art Stone Entertainmentとの協力関係は継続する意向で、「今後ともいただいたご意見を参考に、効果的な交通安全教育の実施に努めていくつもりです」とした。