日本テレビ系のバラエティ番組「ザ!世界仰天ニュース」で、肌荒れに悩む女性が体験した「脱ステロイド療法」が紹介され、皮膚科医らから「症状を悪化させかねない」とSNSで批判が相次いでいる。
療法紹介では、女性が専門医からステロイド剤を使わないことを前提とした指導を受けたとしていた。批判を受けて、日本テレビは2021年9月9日、番組サイトに「治療については、医師の指導に従ってください」などとする文章を掲載した。
「自己判断でステロイドを止めるなどすれば、症状が悪化する」
「取り戻したキレイな肌の真実」「ひどい肌荒れがまさかの方法で回復」。9月7日放送の「ザ!世界仰天ニュース」では、こんなキャッチフレーズで、会社員女性(25)の酷い肌荒れが治ったという「ある方法」をドラマ仕立てでリポートした。
それによると、この女性は、ほおに赤く発疹ができるようになり、病院でステロイド剤を処方された。徐々に強い薬になるも一向に治らないことに悩んだ女性は、調べていくとその「ある方法」を見つけた。それが脱ステロイド療法だ。
女性は、自らステロイド剤を止めて実行に移したが、症状は悪化していった。そこで、専門医のいる病院に行くようになり、この専門医は、ステロイドを使わない以外に気を付けることとして、食事や保湿などの注意点を教えた。いったんは、また悪化してリバウンド症状が見られたが、その症状も徐々に改善されるようになり、400日を過ぎたころには、「元通りの肌」になり、現在もその状態を保っているという。
しかし、番組の放送後には、医療従事者から、自己判断でステロイドを止めたり科学的根拠のない民間療法を受けたりすれば症状が悪化しかねない、番組内でこうしたことにも触れるべきだった、との旨の批判が相次いだ。
アトピー性皮膚炎に詳しい近畿大学の大塚篤司教授は7日、「間違った医療情報は病気の悪化だけでなく命に関わりますが、ちゃんと医療監修入ってますでしょうか?」と番組アカウントに向けてツイッターで投稿した。8日になって、「学会幹部に連絡済み」だとし、BPO(放送倫理・番組向上機構)にも問題点を報告したと明かした。
大塚教授は、ネットメディア「バズフィードジャパン」にも寄稿し、「患者さんの心を折りかねない残念な内容」などと番組の問題点を解説している。
日本皮膚科学会の見解は
日本皮膚科学会のサイトによると、マスコミや一部の医師によるステロイド批判で、1990年代後半にステロイドを嫌う風潮が強まり、必要な治療を受けないまま重症化するケースが増えた。それをきっかけに、学会が「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」を作っている。
「恐がってきちんと塗らないと十分に炎症を抑えることができず、かえって使用期間、使用量が増えてしまいます。疑問点や不安が多いときには皮膚科を専門とする医師とよく話し合って、納得されてからお使い下さい」(学会サイトから)
日本テレビの広報部は9月9日、J-CASTニュースの取材に対し、「患者が自らの判断で薬の使用を中止すると症状が悪化することがあり、注意喚起のため以下の内容をHPに掲載いたしました」と説明した。
その内容は、番組サイトに出されており、次のようなものだ。
「9月7日の放送で、肌荒れを克服した女性の体験談をお伝えしました。この中で、ステロイド薬の使用を中止したエピソードに触れましたが、患者が自らの判断で薬の使用を中止すると症状が悪化することがあります。治療については、医師の指導に従ってください」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)