自民党総裁選(2021年9月17日告示、29日投開票)は、菅義偉首相が総裁に選ばれた1年前の総裁選とは異なり、130万人いる一般党員も投票権を持つ「フルスペック」の総裁選だ。それだけに、各候補者には広く政策を伝える手腕が問われることになる。だが、コロナ禍で街頭演説が難しくなる分、ネット上の発信に代表される「空中戦」がカギになりそうだ。
ただ、国会議員の中でもSNSの活用状況にばらつきがあるのも事実。果たして発信力が高いのは誰なのか。すでに立候補への意欲を表明したり、立候補が取り沙汰されたりしている議員の取り組み(9月7日時点)をまとめた。
237.3万フォロワーの河野氏、ブロック多用に批判も
調査の対象は、高市早苗、岸田文雄、河野太郎、石破茂、小泉進次郎の5衆院議員。5人とも公式ウェブサイトやブログを開設しており、政策をネット上に発信する手段は持っている。高市氏のように、サイト上の「コラム」で政策について解説し、ブログに近い形で発信する場合もある。高市氏以外の4人は、ツイッター、ユーチューブ、フェイスブック、インスタグラムと複数のプラットフォームで発信している。
ツイッターで最も発信力が高いとみられるのが河野氏だ。日英の2か国語でアカウントを持っており。日本語アカウントのフォロワーは237.3万人に及ぶ。一般のツイッター利用者のツイートから自分の名前を見つけ出す「エゴサ」力には定評がある。ただ、ブロック機能を多用することには批判もある。視聴者から質問に答える番組を放送するなどして、ユーチューブも活用している。
小泉氏は主にフェイスブックを使用。フォロワー数は5人の中で最も多い31万人以上だ。公式サイトに目立つように記載されているのはフェイスブックだけだが、21年8月11日付けのブログでは、それ以外のSNSの活用についても
「Instagram(インスタグラム)を始めました。ブログに始まり、Facebookや地元に向けたLINE、海外に向けたTwitterをやってきました。今、Instagramは国内外で利用者が増えているSNSの一つ」
と明かしている。フォロワーはインスタグラム3400人、英語のみで発信しているツイッターが1万人ほど。ウェブサイトやブログからは、小泉氏の公式LINEアカウントにたどり着くことはできなかった。地元支持者向けに公開しているアカウントだとみられる。ユーチューブは20年6月を最後に更新が止まっている。
高市氏、ツイッター乗っ取られて「もういいか」
岸田氏は、5人の中で唯一LINEの公式アカウントの存在を広くPR。ツイッターとフェイスブックで内容を書き分けてもいる。ユーチューブでは出馬会見を中継したり、「岸田ボックス」と呼ばれる目安箱に寄せられた意見に答える番組を放送したりしている。総裁選でも最大限に活用したい考えのようだ。
石破氏の情報発信はブログが基本。ブログの更新通知がツイッターやフェイスブックに投稿される仕組みだ。ユーチューブでは、「イシバチャンネル」と題したチャンネルで、司会者からの質問に答える形で、政策に関する見解を披露している。インスタグラムもあるが、3月19日で更新が途絶えている。
最もSNSの活用が少ないとみられるのが高市氏。フェイスブックはウェブサイトの政策コラム、インスタグラムはウェブサイトの「アルバム」から、それぞれ転載。高市氏は過去にツイッターアカウントを乗っ取られたことがあるといい、9月1日に行ったJ-CASTニュースに取材に対して「もういいか」と、活用を断念したことを明かしている。
「色んなお友達が勝手連で応援してくれているので、今回はそれに甘えようと思います」
とも話しており、応援アカウントの活躍に期待をかけている。
動画発信についても、「党員の皆さん全てがユーチューブをご覧になるわけでもないし...」と否定的だ。
ネット上の発信以外に、党員名簿をもとにした「電話作戦」や郵便物を送る作業も欠かせない。これらの作業には人手がかかるため、日頃の資金力や組織力がものを言うことになりそうだ。さらに、テレビをはじめとするメディアの露出も、党員の投票行動に影響することになりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)