前総務相の高市早苗氏(60)が、安倍晋三前首相の支援を受け、自民党総裁選への出馬の意思を固めたと報じられている。
前政調会長の岸田文雄氏(64)の動きが先行していたが、菅義偉首相の退陣表明を受けて情勢が変わった形だ。高市氏は、2021年9月29日投開票の総裁選で、台風の目になるのだろうか。
ネットでは、これまでの発言が注目され、首相にふさわしいか論議に
高市氏は、早々と出馬に意欲を見せたものの、無派閥のため、立候補に必要な20人の推薦人を集められるかが焦点だった。
それが、菅首相が9月3日に突然、総裁選への不出馬の意向を明かすと、事態は一変する。報道によると、菅首相の再選支持を表明していた安倍前首相は、この事態を受けて、すぐに行動を起こし、高市氏に同日中に電話して支援する考えを示した。
これで、高市氏は、20人の推薦人を集めるメドが立ったとされている。
さらに、週明けの6日になると、麻生太郎副総理も高市氏支援に回る可能性が報じられた。麻生派では、河野太郎行革相(58)が出馬の意思を固めたともされるが、麻生氏は、「出馬に反対だが、出るのは勝手だ」といった内容を河野氏に伝えたとし、同派が自主投票になる見込みも指摘されている。
こうした動きの背景には、第100代の総理大臣を「憲政史上初の女性首相」として選挙の顔にしたい思惑もあるかもしれない。高市氏を推す動きが広がったことで、ネット掲示板などでは、高市氏のこれまでの発言なども取りざたされ、首相にふさわしいのか論議になるほどの注目ぶりだ。
ただ、高市氏が安倍氏出身の最大派閥、細田派を抜けた経緯があることから、同派内で高市氏への異論も出ているとされている。共同通信や読売新聞が4、5日に行った世論調査では、高市氏が首相にふさわしいという人は3~4%に留まっており、自民党員などの投票で支持を集められるかもカギになりそうだ。
混戦模様となった総裁選で、高市氏が選ばれる可能性はどのくらいあるのだろうか。
なぜ推薦人20人を確保できたかについて、政治評論家の有馬晴海さんは6日、J-CASTニュースの取材にこう話した。
有馬晴海氏「他の候補の対抗馬にはなるが、本命とまでは言えない」
「安倍さんは、出身の細田派だけではなく、麻生派など他の派閥にも電話して、高市さんへの支援をお願いしています。20人の推薦人は余裕で、100人は集まるのではないですか。安倍さんには、大臣登用などで何十人もが長年お世話になっており、初の女性総理になれば国民の支持も上がると考えたこともあるでしょう」
高市氏は、早くから安倍前首相からの支持を取り付けていたことも、菅首相退陣を受けて安倍氏がすぐに動いた背景にあると有馬さんは指摘する。
「高市さんは、安倍さんに総裁選に出てほしいとずっと言い続けていましたが、安倍さんが出ないと最終的に確認が取れたといいます。安倍さんは、サナエノミクスでもいいんじゃないかと言っていましたが、自分がニュー・アベノミクスに取り組んで、経済政策を元に戻すと意気込んでいました。安倍さんの支持を念頭に2~3か月前から準備して、雑誌に出たり本の出版を進めたりして、2週間前には、高市さんの顔は自信に満ちていましたね」
ただ、高市氏について、有馬さんは、こうも指摘する。
「岸田さんや河野さんらへの対抗馬にはなると思いますが、まだ本命とまでは言えません。細田派、麻生派のある程度の人たちは、安倍さんに同調し、高市さんは一定の票は取るでしょう。とはいえ、岸田さんは、この間まで本命でしたし、河野さんは、国民的な人気があり、派閥横断的に支持する若手議員の数も多く、その意味で本命だと言えます」
なお、石破茂元幹事長(64)、野田聖子幹事長代行(61)も、二階俊博幹事長の支援を求めて総裁選への意欲を示しているが、出馬するかはまだ流動的な状況だ。石破氏は、河野氏を支援し、不出馬の方向だとも一部で報じられている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)