「両足がない選手」の金メダルに、どこか自分を重ねた 僕が東京パラリンピックで泣いた瞬間

板バネがついた義足を履いた経験

   色々な意見があるかもしれません。走り幅跳びでは「板バネ」がついた競技用の義足を使います。両足義足の方がバネの力が大きくなるのではないか。そんな声も聞いたことがあります。でも、板バネをコントロールするのはとんでもなく難しい。

   実際に僕も、板バネがついた義足を履いたことがあります。小須田選手と一緒に以前、競技用義足を扱う東京・豊洲の「ギソクの図書館」を訪れた時です。

   いざ履くと、立っていられないんですよ。両足つま先立ちのような感じ。アンバランスすぎて止まってもいられない。誰かの肩につかまって走る練習をするけど、とにかく転びました。義足で歩くのは結構うまい自信があったんですけど、バンバン転びます。「よっしゃ順調だ」と思っても、2~3歩油断するとバランスを崩す。最終的にピョンピョン跳ねるくらいはできて楽しかったですが、24時間テレビのゴール直前くらいのスピードでしか進めません。

   アスリートとは比べられないかもしれません。でも、僕にもそんな経験があるから、走り幅跳びのパラリンピック選手たちが、いかに努力して肉体と道具を使いこなしているかが想像できます。体験しているから思うんです。バランスを取ることすら難しいのに、義足をコントロールして、全速力で助走をつけて大ジャンプするって、計り知れないことだと。

   いろんな角度から見ていくと、アスリートの皆さんは物凄い次元で戦っていることが分かります。人の心をこれだけ動かしてくれる。パラリンピックは1年延期になって調整が難しかった中、多くの選手が自己ベストを出した走り幅跳びは本当に興奮しました。

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