「獺祭」旭酒造が消毒液を作り続ける理由 赤字なのになぜ?社長が明かした真意

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「農家さんを支えたい」赤字でも販売

   山田錦から作られたエタノール消毒液は現在、「手指消毒用 獺祭エタノール 750ml」という名で販売されている。公式オンラインストアでの値段は1650円(税込み)だ。

   1本750ミリリットルには、約3キログラムの玄米が使われている。従来の獺祭の磨き二割三分(720ミリリットル)に用いられる玄米は約1.6キロなので、ほとんど2倍の量だ。さらに獺祭で用いられる山田錦は、「酒米の帝王」の異名を持つ高級ブランド米。そのため獺祭エタノールは、赤字で販売されているのだという。

「エタノールのみを作ると割り切るならば、食用米の何倍も高い山田錦を用いず普通の米を使う手もあります。そもそも米を使う必要もありません。ですが、私たちはやはり農家さんを支えたい。
なおかつエタノールとして手に取ってもらえるものでなくてはいけないので、価格も大事。赤字とはいえ我慢できる赤字になるような値段設定にしております。そこが一番大変な部分でしたね」

   旭酒造は獺祭エタノールを20年6月下旬から販売している。発売した月は4000本ほど売れたが、徐々に売れ行きは下降していった。しかし21年8月下旬ごろから、再び獺祭エタノールの注文数が伸び始めた。日本酒を好むライターがツイッター上で紹介したことをきっかけに、SNS上の注目が集まったのだ。

   桜井さんは、こうした反響に驚きつつも喜びを露わにする。

「びっくりしましたし嬉しいですね。最初はエタノールの注文がちょっと上がったなあというくらいの感じで、気づいていませんでした。しかしうちの社員から『SNSで取り上げてくれた人がいて話題になっているよ』聞いて拝見しました。
香りについては、つけようとしていたわけではありませんでした。農家さんを助けるために山田錦を用いた結果、いい香りになったのです。改めて山田錦の良さを実感し、嬉しく思いました」

   桜井さんは、消毒液をきっかけに山田錦や生産農家に思いをはせてもらえることにも手ごたえを感じていると話した。

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