パラリンピックの見方に「正解」はない
そうやって1つ1つの競技を見ていくと、僕は各選手の障害そのものも気になってきます。障害の特徴が、選手としての特徴に繋がってくることも多いからです。自分の体を生かしているから、「こういう体の人はこういったプレーができるのか」と気付くこともあります。選手のことを知っていくとパラスポーツに一層のめり込めるし、人生でどういう経験があって今この舞台で輝いているのかまで分かると、応援する気持ちもより強くなってきます。
友達のアスリートに、陸上短距離(T64)の井谷俊介選手がいます。4年前くらいに、義足のアスリート集団「TEAM POSITIVE」への参加を通じて出会いました。年齢が僕の4つ下くらいと近いのもあって意気投合。オズールという同じ義足メーカーから提供を受けることになると、より距離が近くなりました。ついこの前も一緒にご飯を食べました。俊介から僕が勇気をもらうことはたくさんあるし、僕のYouTubeやSNSでの活動が俊介にも刺激になっているみたいで、本当に高め合える良い関係です。
俊介はもともと陸上を経験していませんでした。バイク事故で5年前に右膝から下を失った後、3年前から本格的に競技を始めて、努力を重ね、花形と言える100メートルのアジア記録(当時)を樹立するまでの選手になりました。努力し続ける姿をずっと見てきて、何回も大会の応援に直接行きました。
彼は代表選考に関わる最後の大会が2位で、東京パラリンピック出場は叶いませんでした。でも、ここで終わる選手ではないです。この経験をバネにして成長できる人間だし、もちろんこれからも応援するし期待したいです。
オリンピックもそうですが、結局パラリンピックの見方に「正解」はないので、いろんな角度から楽しめると思います。まずは興味を持てると、その先には知らなかったスポーツの世界が広がっていて、どんどん熱くなっていきます。他のスポーツと同じで、間違いなく感動できる競技があり、応援したくなる選手がいるはず。その入り口として、この東京パラリンピックで色々な競技を見ることを多くの皆さんにお勧めしたいですね。