【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~
東京パラリンピックが開幕した。自国開催ということもあって過去の大会に比べ、注目度は高まっている。一方で、普段パラスポーツを目にする機会が少ない人にとっては、見どころが分からないということもあるだろう。
20歳の時に事故で両足と右腕の手足3本を失い、現在YouTubeやSNSを通じて障害に関する情報を発信している山田千紘さん(29)は、パラスポーツに取り組んだ経験もあり、パラアスリートの友人もいる。そんな山田さんが思う、「パラリンピックの楽しみ方」はどんなものか。本人が語った。
(この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)
パラスポーツはより「工夫」が多い
「もしかしたら自分がパラリンピックの舞台を目指せる競技があるかもしれない」。21歳ごろの時にそう思って、パラスポーツに興味を持つようになりました。いろんな競技を自分なりに調べていくと、知れば知るほどパラスポーツの魅力を感じていきました。
実際に車いすラグビー、車いすバスケットボール、水泳などはプレーもしました。車いすラグビーの練習に参加していた時、選手たちが凄まじい筋力トレーニングをするのも見ていました。2019年のラグビーワールドカップと同時期に開催されて、日本が3位に入った車いすラグビーワールドチャレンジは生観戦もしました。
調べたり、見たり、プレーしたりする中で僕が魅力に感じたのは、パラスポーツはより「工夫」が多いということです。色々な体の選手たちが競技に挑んでいます。個人競技なら選手たちがどういう体の使い方をしているか。チームスポーツならチーム戦略と、それを実行する各選手の工夫や個性に注目するのも面白いです。
パラリンピックにはオリンピックと共通する競技があります。バスケットボール、フェンシング、陸上競技、水泳などなど。何が違うかと言うと、出場選手は同じ障害がある選手ばかりではないので、障害の種類や程度に応じた「クラス分け」がされている点です。
たとえば車いすラグビーは、障害の程度によって選手ごとに0.5~3.5点の7クラスで「持ち点」が決められ、コート上の4選手合計で8.0点までと決まっています(女子選手1人につき上限0.5点加算)。持ち点は障害の度合いによって変わり、障害が軽ければ大きく、障害が重ければ低くなります。
つまり、異なる障害がある選手たちが1つのチームを作っています。同時に、こうしたルールを背景にしたチーム戦略も見て取れます。ディフェンス力を抑える代わりに強力なポイントゲッターを2人入れたり、全選手平均的にバランスをとったり。戦略を把握しながら見るという楽しみ方もあります。
競技に使う車いすも、大きく分けて攻撃型と守備型の2種類に分かれます。各選手がどんな車いすを使っているかに注目するのも面白いかもしれません。