2010年4月に活動を開始したアイドルグループのさくら学院が、2021年8月31日をもって11年間の活動を終了する。
11年間、といっても一貫して在籍したメンバーがいたわけではない。グループ名の通り、毎年「入学」と「卒業」を繰り返し、中学を卒業すると自動的に卒業と、限られた時間のメンバーを応援するコンセプトのグループだった。アイドルに詳しいライターの岡島紳士さんの分析と共に、グループの特色とエンタメへの貢献を振り返る。
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さくら学院最後の在校生となった2020年度生
アイドル戦国時代さなかに結成
さくら学院はアミューズの運営で2010年4月に結成。一貫してメンバーは小中学生のみ、「成長期限定」のグループとして、中学を卒業するとグループも卒業するシステムを採用する。
「『アイドルを越えたスーパーレディ』になることを校則（活動目標）に掲げているグループですが、様々なレッスンを経験させ、その発表の場としてのライブなどのイベントを設ける、というコンセプトだったのでしょう」と岡島さんが分析するように、10代での卒業とその後のタレントとしてのキャリアを前提に活動を組んでいる。
メンバーは「生徒」で各人に「〇〇委員長」という肩書があり、ファンは「父兄」、ライブには「学院祭」「卒業式」、物販を「購買」、スタッフのツイッターアカウントは「職員室」といったように学校をイメージした用語を使っており、タワーレコード社長の嶺脇育夫さんもファンを公言する1人だ。
結成の2010年前後はアイドル戦国時代と言われ、メジャー・インディーズともにグループが林立。ももいろクローバー（現・ももいろクローバーZ）・私立恵比寿中学（スターダストプロモーション）、スマイレージ（現・アンジュルム、アップフロントプロモーション）、東京女子流・SUPER☆GiRLS（avex）など大手芸能事務所から現在も活動中のグループが多く結成された時代だった。その中でも、はっきりと活動年齢の上限を示したグループは珍しい。
「アイドルの販促で当たり前になった握手会などの接触イベントを一切行わないグループで、接触のためにファンがCDを『積む』行為とも無縁でした。代わりにファンヘは『お手振り』というレスポンスの習慣があります。『皇族感』ともいわれるお嬢様チックな雰囲気もあるイベントです」（岡島さん）
BABYMETALも生み出した、豊かな音楽性
グループOGには現在女優・モデルの三吉彩花さんや松井愛莉さん、声優の佐藤日向さんらがおり、モデル・俳優・音楽などのジャンルで活動中のOGがいる。なかでも密接な関係にあるのがBABYMETALだ。
現メンバーの中元すず香さんと菊地最愛さん、元メンバーの水野由結さんの3人とも在籍歴があり、ルーツはさくら学院内の「部活動」（ユニットのこと）である「重音部」にまでさかのぼる。
2011年にメンバーが在籍したまま重音部に「BABYMETAL」のユニット名が与えられ、中元さんが2013年3月、菊池さんと水野さんが15年3月にさくら学院を卒業したことで兼任状態は解消し、BABYMETAL単独としてさらに活動の幅を広げていった。
重音部がBABYMETALへ飛躍したように、さくら学院の楽曲はバラエティ豊かだ。
「グループの全体曲は王道アイドルソングですが、ユニット曲にはそこからズレた挑戦的なものもあります。『バトン部』であるTwinklestarsのナンバーは渋谷系のサウンドを取り入れ、『科学部』（ユニット名は『科学究明機構ロヂカ？』）の楽曲『Welcome to My Computer』などはテクノポップの要素があります」（岡島さん）
コロナ禍が活動終了の一因に？
グループメンバーへの取材経験もある岡島さんは「皆しっかりしていて礼儀正しいメンバーです。事務所の教育も行き届いているのでしょう」と印象を話す。
卒業後も見据えたタレント教育の機関としても機能して11年続いてきたが、ティーンアイドルゆえの限界もあったようだ。すなわち新型コロナによるアイドル界の激変である。
さくら学院も活動終了決定後の21年8月2日まで有観客イベントが約1年半にわたって開催できなかった。「このような状況ですから、地方から東京にレッスンに来ている娘を持つ親御さんなどは懸念されることもあるかと思います。現在のコロナ感染拡大状況が活動終了の遠因でもあるかもしれません」と岡島さんは推測するが、現状は確かに成人したタレントと異なり未成年の子を持つ親、預かる事務所共に緊張がのしかかる局面だろう。
すでに8月7日にラストアルバムとして11thアルバム「さくら学院 2020年度 ～Thank you ～」をリリースした現メンバーは、8月29日にラストコンサート「さくら学院 The Final ～夢に向かって～」を東京・中野サンプラザで開催する。グループは活動を終えても、OGたちの活躍は続いている。
（J-CASTニュース編集部 大宮高史）