新型コロナウイルス感染拡大にあたり、群馬県が若年層のワクチン接種促進を狙って実施する「抽選企画」に、ネット上で賛否の声が上がっている。
接種拡大につながると好意的にとらえる声が出る一方で、「物で釣る」ような内容に抵抗感を示す意見もある。J-CASTニュースは、企画実施の意図とワクチン接種率への影響について群馬県に取材した。
「20代、30代の方に『朗報』です!!」
企画がネット上で注目されるきっかけとなったのは、あるツイッターユーザーが「群馬県、やりやがった...」として2021年8月24日にキャンペーンの告知動画を紹介したことだ。
動画は、群馬県庁の動画・放送スタジオ「tsulunos」が「新型コロナワクチンの接種を悩んでいる方へ」と題してYouTubeに同日に投稿したもの。
前半では穏やかなピアノを伴奏に、コロナ禍以前の日常を取り戻すために、ワクチンの摂取を検討してほしいと情緒的に訴えている。後半へ移ると雰囲気は一変、アップテンポな音楽に切り替わり、
「群馬県民の20代、30代の方に『朗報』です!!」
「ビッグチャンス!!」
「さぁ!!今すぐワクチン接種予約を!」
のテロップが。9月末までに2回のワクチン接種を済ませた20代・30代の県民を対象とする抽選企画が告知された。
動画の中で「豪華景品」だとして紹介されたのは、メーカー希望小売価格・税込220万円の車「SUBARU XV(1.6 EyeSight)」が1台。なおスバルの本工場は群馬県太田市スバル町に所在している。ほかにも県内旅行券2万円分が250人、5万円分が100人に当たり、景品総額はおよそ1220万円。
県が公表している住民基本台帳に記載された対象年齢人口の40万4023人(20年1月時点)で計算すると、仮に全員がワクチンを2回接種し、かつ抽選に応募した場合の当選確率は約0.087%。およそ1151人に1人の割合で景品を獲得できることになる。
申込受付は21年9月15日から10月31日まで、群馬県LINE公式アカウント「群馬県デジタル窓口」で行われる予定だ。
プレゼントキャンペーンによってワクチンの摂取促進を図ろうとする企画について、ツイッターでは、
「難しく考えないで、こんなんでいいと思うのよね」
「一気に接種が進みそう」
と好意的な反応が寄せられている一方で、「物で釣らないでもらいたかった」「不謹慎」などと抵抗感を示すような声も出ている。
「一人でも多くの若者に、一刻も早く周知するため」
25日にJ-CASTニュースの取材に応じた群馬県メディアプロモーション課の担当者は、若年層のワクチン接種を進めることが「感染収束の鍵」だとして抽選企画を立ち上げたとする。ワクチン接種促進のための「インセンティブ」だという。
担当者によると、県内において若年層は新規感染者の半数近くを占め、かつ接種が比較的進んでいないという状況。「副反応が不安等の理由で接種を迷っている人の割合が高い傾向にある」といった調査もあるといい、「ワクチンへの正しい理解が進んでいない可能性がある」とも話す。
話題となった動画は、抽選企画の告知に終始しているが、同じ24日には「新型コロナワクチン 大学生の声 みなさんへのお願い」というタイトルで、若年層に向けてワクチン情報を伝える動画も投稿されている。
それぞれ告知とワクチン情報を伝える動画は「あえて」分割したと担当者は言う。「一人でも多くの若者に、一刻も早く周知するため、(告知は)短くて印象に残る動画とした」と明かす。
なお、この抽選企画は動画公開に先駆け、6日の知事記者会見で発表された。その前後における、20代及び30代の群馬県民(医療従事者等を除く)の1回目接種率の推移は、担当者が伝えたところによると以下となる。
8月1日:18.9%
8月10日:26.5%
8月19日:36.2%
担当者は、抽選企画を実施した効果も含めて、「現在のところ、着実に若年層の接種率は増加傾向にあります」と話す。ネット上で賛否の分かれた反応が出ていることについては、
「受け止めは様々だと思いますが、ワクチン接種を逡巡している方がこの動画を見て、一人でも多く、接種を前向きに考えていただればありがたいです」
と伝えた。