「慫慂」――あまり見慣れないこの熟語が話題になったのは、2021年8月13日、九州で大雨が降った日のことだ。JR佐賀駅で掲出された告知文にこの文字が使われ、読み方や意味をめぐってツイッターで注目を集めた。
読み方は「しょうよう」
8月11日から九州で降り続く大雨の影響でJR九州の各線は運休が続き、8月13日も北部九州では運休が相次いだ。そのうち唐津線の運休を伝えるJR佐賀駅の掲示板に、「ご旅行の中止を慫慂いたします」と書かれていた。
掲示板の写真がツイッターに投稿されると、「慫慂」とはどう読むのか、どういう意味なのか、とユーザーの興味を引いた。見慣れない言葉に驚いた人が多かったようだ。
「慫慂」は「しょうよう」と読む。広辞苑第七版によれば「かたわらから誘いすすめること」という意味。「推奨」「勧奨」に近い意味合いだが、鉄道・旅行業界の内部あるいは判例などで現在も時折用いられる語でもある。国鉄時代は内部文書などでしばしば用いられていたようだ。前出の写真にある掲示文は、列車運休のため旅行の中止を乗客に勧めるものだった。
8月20日にJR佐賀駅に取材したところ、同駅も13日以後の反響の大きさを知っていた。「部内では旅行などの『中止を慫慂する』のように使っていたのですが、社外のお客様には馴染みがなかったようです。これからはお客様への伝え方を工夫する必要があるかもしれません」と取材に応じた同駅社員は話している。
国鉄ではないが、鉄道会社勤務経験がある鉄道ライターの枝久保達也さんに「慫慂」を使ったことがあるかどうか聞いてみると、「当時自社の中で使ったことはないですが、JR社員が時々口にしているのを聞いたことはあります。格式ばった語なので昔はよく使っていたかもしれませんが、現在一般の乗客向けに使うことはほとんどなく、(佐賀駅の件は)つい昔の感覚で使ってしまったのかもしれません」と取材に答えた。
(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)