ネクタイのほつれた糸は「絶対に切っちゃダメ」 裁縫のプロが注意喚起、一体なぜ?

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   ネクタイから細い糸が飛び出ても絶対に切らないで――。

   こんな豆知識を、縫製会社「笏本縫製」(岡山県津山市)のネクタイ職人がツイッターで紹介すると、約3万件の「いいね」が寄せられるなど大きな注目が集まっている。J-CASTニュースは理由や対処法を聞いた。

  • ネクタイの豆知識が話題に(写真:笏本縫製提供)
    ネクタイの豆知識が話題に(写真:笏本縫製提供)
  • ネクタイからほつれ出た糸(写真:笏本縫製提供)
    ネクタイからほつれ出た糸(写真:笏本縫製提供)
  • 笏本達宏さん(写真:笏本縫製提供)
    笏本達宏さん(写真:笏本縫製提供)
  • 高級ネクタイブランド「SHAKUNONE」 (写真:笏本縫製提供)
    高級ネクタイブランド「SHAKUNONE」 (写真:笏本縫製提供)
  • ネクタイの豆知識が話題に(写真:笏本縫製提供)
  • ネクタイからほつれ出た糸(写真:笏本縫製提供)
  • 笏本達宏さん(写真:笏本縫製提供)
  • 高級ネクタイブランド「SHAKUNONE」 (写真:笏本縫製提供)

飛び出た糸の正体は?

   笏本縫製は1968年に創業し、津山市に縫製工場を構える。様々なブランドの縫製を受注している。2015年には高級ネクタイブランド「SHAKUNONE」を立ち上げ、オンラインショップや百貨店などで販売している。

   同社の代表取締役でネクタイ職人の笏本達宏(しゃくもとたつひろ)さんが8月16日、ツイッターでこのような呼びかけをした。

「絶対に切っちゃダメ。ネクタイからこんな糸が出てても無茶に引っぱったり切ったりしないで」

   ネクタイの大剣の裏側から、細い糸がたるみ出てしまうことがある。笏本さんによれば、この糸は「スリップステッチ」と呼ばれる。ネクタイの伸縮性を維持する長い一本の糸で、切ってしまうとネクタイがほつれてしまうという。

   ツイッター上では、

「めっちゃブチブチ切ってた。どおりですぐネクタイがボロボロになるわけだ」
「これ、知らないと引っ張っちゃうなあ!びっくり」

などと驚きの声が寄せられている。

   それでは、どのように対処したら良いのか。J-CASTニュースは18日、笏本さんに取材した。

「少しだけ出ているのが正常な状態」

   笏本さんは、スリップステッチは飛び出たままで問題ないと説明する。

「少しだけ出ているのが正常な状態ですので、無理に引っ張ったりしないようにしてください。気になるようであれば見えないところに押し込んでも大丈夫です」

   笏本さんは「この糸はネクタイの生命線」だと強調し、絶対に切らないように念押しする。

「きちんと作られるネクタイは、苦しさを軽減しつつカッコイイ結び目を作るために、伸縮性を重視して作ってあります。そしてネクタイの中心は長い距離を1本の糸で仕立てていて、スリップステッチはその伸縮を補助する大切な役割があります。結んだり解いたりするときに、スリップステッチがスルスルと動いてネクタイの破損を防ぎます」

   万が一スリップステッチを切ってしまった際には、すぐに糸の根元で玉結びをすると良いという。ある程度のほつれを防ぐことができる。しかし大切な人からのプレゼントや気に入った品など、元通りにしたい場合にはプロの職人に相談するのが良いと述べた。

大事なネクタイを長持ちさせるコツ

   笏本さんによれば、ネクタイを長持ちさせるコツは連続使用を避けることだという。一度使ったものは少し休ませてから使うのがおすすめだとアドバイスする。

   さらにネクタイの細かな傷などが気になった際には、歯ブラシなどでのブラッシングを勧める。

「これは私たち職人も実践する方法なのですが、一般的にネクタイはデリケートな素材であるシルクを使用することが多く、キズが気になることがあります。そんな時は、柔らかめの歯ブラシなどでブラッシングをしてあげるとキズや毛羽立ちが見えにくくることがあります。特別な道具は必要ありません。気になる方は実践してみてください」

   最後に笏本さんは、男女問わずネクタイを贈ってほしいと述べる。インターネット上では、女性にネクタイを贈ることに抵抗感を示す書き込みがあるとも漏らす。

「女性にネクタイをプレゼントしようとした際にネット検索をすると、束縛とか首ったけといったようなネガティブな印象で書かれることがあります」

   しかし、「大切な人にネクタイをご検討なら、自信を持って選んで差し上げてください」と訴える。

「もともと戦地に向かう男性の無事を祈って、女性から贈られたスカーフが始まりだと言われています。当時はいわゆるお守りのようなものでした。そこにあったのは大切な人を想う気持ちです」

   大切な人を思う気持ちは今も昔も変わらないため、前向きに選んでほしいと述べた。

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)

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