「少しだけ出ているのが正常な状態」
笏本さんは、スリップステッチは飛び出たままで問題ないと説明する。
「少しだけ出ているのが正常な状態ですので、無理に引っ張ったりしないようにしてください。気になるようであれば見えないところに押し込んでも大丈夫です」
笏本さんは「この糸はネクタイの生命線」だと強調し、絶対に切らないように念押しする。
「きちんと作られるネクタイは、苦しさを軽減しつつカッコイイ結び目を作るために、伸縮性を重視して作ってあります。そしてネクタイの中心は長い距離を1本の糸で仕立てていて、スリップステッチはその伸縮を補助する大切な役割があります。結んだり解いたりするときに、スリップステッチがスルスルと動いてネクタイの破損を防ぎます」
万が一スリップステッチを切ってしまった際には、すぐに糸の根元で玉結びをすると良いという。ある程度のほつれを防ぐことができる。しかし大切な人からのプレゼントや気に入った品など、元通りにしたい場合にはプロの職人に相談するのが良いと述べた。