中国政府がSNSでも対米批判を強めるなか、在大阪中国総領事館の薛剣(セツケン)総領事のツイートが波紋を広げている。カブールの空港から脱出する米軍機から人が転落する様子を揶揄するともとれる内容のツイートだ。
20年にわたる米軍のアフガン駐留を批判する狙いがあるとみられるが、外交官が実名で人命軽視ともとられかねない内容をツイートするのは異例。民主化を求める学生を中国当局が武力で弾圧し、多数の死傷者を出した天安門事件(1989年)の画像を張り付けて返信し、抗議する声も相次いでいる。
2001年にはミサイル、2021年には人間を...
アフガニスタンでは2021年8月16日、離陸に向けて動き出した輸送機の脇を人々が並走したり、離陸した輸送機から人々が落下したりする動画が撮影され、SNSで拡散。世界中に現地の混乱ぶりを伝えることになった。
そんな中で書き込まれたのが薛総領事のツイートだ。投稿では、2機の米軍機のイラストを掲載。1機はミサイルのようなものを落下させており、「2001年、アフガンに侵入したとき」という説明がついている。もう1機からは人が落下しており、説明は「2021年、アフガンから撤退するとき」。ツイートには「20年かかって、アメリカはアフガンでこんな『成果』を挙げた」という一文が添えられた。
米軍は01年9月の同時多発テロ事件の約1か月後に、国際テロ組織のアルカイダをかくまったとして、当時のタリバン政権を攻撃。それ以来、約20年にわたってアフガン駐留を続けてきたが、21年9月までに完全撤退することを決めている。
薛総領事のツイートは、米軍駐留に成果がなかったことを皮肉る狙いがあるとみられるが、人命を軽視するかのような内容に、返信欄は「天安門事件」「天安門」といった声であふれた。
総領事館のウェブサイトによると、薛総領事の着任は21年6月。外交官としては北京のアジア局と在京中国大使館を往復するキャリアで、米国への赴任経験はない。ツイートに一貫しているのは、対米批判と日中友好だ。例えば8月13日には
「笑止千万!アメリカが民主サミットを開催するんだって?今のアメリカに民主があるとすれば、腐敗した民主、金まみれの民主、泥沼化の民主しかない。ほら、見てみよう。コロナの中で60万人以上もの人が命を失ったアメリカ、誰かが責任を取ったのか?いないでしょう?!」
などと米国のコロナ対策を批判する一方で、アドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)のジャイアントパンダ、彩浜(さいひん)の3歳の誕生日にあたる8月14日には、「彩浜ちゃん、お誕生日おめでとうございます!」と日本語で祝福する動画を公開した。
対米批判と日中友好で硬軟使い分ける
8月19日のツイートでは、東京五輪で大活躍した卓球の伊藤美誠選手を中国のライバル、孫穎莎選手が絶賛したことを報じる記事を張り付けて
「これこそ健全なライバル関係。お互いに尊重し合い、認め合い、相手の長所を習いながら、ともに磨き高めていく。ライバルの間でもこれができるなら、国同士の間にできないはずがない。日本の皆さん、考え方を切り替えて、一緒に頑張ろう」
などと呼びかけた。
総領事館のツイートも傾向は同じで。硬軟双方のツイートが共存している。8月13日には、星条旗が入ったワシのような鳥(米国の国章にはハクトウワシがあしらわれている)が、紙幣や武器、ウイルスをばらまくイラストをツイート。イラストには「偽情報で世界一」「政治的分裂で世界一」「通貨の過剰供給で世界一」「パンデミック拡散で世界一」といった文字が入っており、さらに「さぁ、次は何で世界一を取ろうか」という一文を添えてツイートした。
一方で、「隣の国はどんな国」と題したクイズ企画も行っており、記念品として「特別職員」と銘打ったパンダのキャラクター「パンパン」のグッズを配布。グッズが届いたことを喜ぶツイートを
「絵文字かわいい」
「中日友好のために共に頑張らなきゃ」
というコメントとともに引用するなどしている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
20年かかって、アメリカはアフガンでこんな「成果」を挙げた。#アフガン pic.twitter.com/sr6Hya0vCi
— 薛剑XueJian (@xuejianosaka) August 18, 2021