朝日新聞社は2021年8月17日、撮影者や撮影日時が不明瞭な写真を使用したことがわかったとして、前日にウェブ版で配信した記事の削除を発表した。
同社は取材に「今後、確認が不十分な写真を掲載することがないよう再発防止に努めます」としている。
「現地にいる通訳者から画像を入手」
問題の記事は、朝日新聞デジタルで配信された「『米国の失敗』 20年間のアフガン戦争の大義どこに」。アフガニスタンの反政府勢力タリバーンによるカブール制圧を受け、フリージャーナリストの西谷文和氏にインタビューしている。
西谷氏は大学卒業後、吹田市役所(大阪府)勤務を経て、フリージャーナリストとなった。「イラクの子どもを救う会」の代表も務める。近著に『西谷流地球の歩き方』『ポンコツ総理 スガーリンの正体 すべてはウソと八百長だった』などがある。
記事では、現地で撮影された写真を9枚使用している。いずれも西谷氏が提供した。うち5枚は、カプール国際空港に押し寄せる人々や政府軍の兵士など、現地の混乱を伝える写真だ。クレジットには共通で「西谷文和さんが現地にいる通訳者から画像を入手した=2021年8月、西谷さん提供」と記している。
しかし、朝日新聞社の発表によれば、「複数の画像について撮影者や撮影日時などが特定できなかった」として、17日までに記事を削除した。
記事で使われた写真がインターネット上で見つかったことから、SNSでは著作権侵害ではないかとの指摘が上がっていた。
西谷氏「誰の撮影なのか、現在のところ不明です」
西谷氏は18日、ブログ(https://www.nowiraq.com/blog/2021/08/sns.html)で騒動について説明した。
西谷氏によれば、写真は現地の通訳からメールで送ってもらったものの、記事公開後に朝日新聞社から「(写真の一部は)別の誰かがツイートしているものではないか」と連絡があった。
通訳に確認すると、「暴動が起きた直後から仲間と一緒に空港に入り、一晩写真を撮り続けていた」と主張し、転載を否定した。
「中国系のメディアの現地記者が撮影したものではないか」との指摘もあり、この記者に事実確認をするよう通訳に求めると、「写真をもらったので、ツイッターにアップした」と話していると報告を受けた。西谷氏もコンタクトを図ったとみられるが、「8月18日午後3時半現在、まだ連絡はありません」と裏付けはできていないという。
記事ではカブール国際空港の航空機を横から撮った写真を使っていた。通訳は別角度から撮影した写真も持っていたが、西谷氏は「誰の撮影なのか、現在のところ不明です」との見方を示す。
誹謗中傷には法的措置も検討
記事削除の判断については、「8月17日の時点では、まだJAWID氏(現地記者)との連絡が取れておらず、このままだと朝日新聞社にもご迷惑がかかる可能性があるので、『確かに通訳のアブドラが無断でインターネットから取ってきた可能性がある』と考えましたので、公開終了することに合意しました」と明かした。
そのほか、自身のツイッターでの8月15日以降の投稿で不手際があったとして、次のように謝罪している。
「一連のツイートに掲載した大部分のものは、彼(通訳)が直接撮影したものです。しかし中には彼が友人からもらったものが含まれており、この点を確認せず、SNSで発信したことは軽率だったと思います。特に19年8月にロイター通信で使われた写真を、『2週間前に撮影されたものだ』とのアブドラの証言を鵜呑みにしてしまい、ツイートしたことは軽率で、ロイター社のみならず、ツイートを閲覧した方々に誤解を与えたことを、ここに謝罪し、このツイートに関して早急に削除いたします」
今回の一連の騒動で、事実誤認に基づいた誹謗中傷も寄せられているといい、「私と通訳への名誉毀損にもなりますので、今後このような投稿をされる方々には法的措置も取らせていただきたいと考えています」と警告している。
朝日新聞社広報部は18日、J-CASTニュースの取材に、削除の経緯について「記事の掲載後にネット上などでの指摘もあり、確認作業を進めたところ、弊社で撮影者や撮影日時などが特定できないと判断した写真がありましたため、公開を終了したものです。確認作業の際には、西谷文和氏とも連絡をとらせていただきました」と回答。
「今後、確認が不十分な写真を掲載することがないよう再発防止に努めます」としている。