コロナ禍の中でのマスク着用が暑苦しいときには、マスクにハッカ油を塗って涼しさを感じようとする人もいるようだ。
ただ、ハッカ油は、ネコなどのペットの健康を害する可能性があるともされている。そんな中で、マスクにハッカ油を使った客の入場を断る場合もあるとの貼り紙を出した動物関連の施設があると、ツイッターで話題になっている。
「鳥・小動物を守るために知ってほしいこと」
施設の貼り紙については、2021年8月14日にその写真がツイッターで投稿された。
「鳥・小動物を守るために知ってほしいこと」と赤字のタイトルで、ハッカ油を始めとした精油について、わずかな量でも命に関わることがあり危険だと注意を促した。
また、精油由来の臭いは、鳥や小動物には、刺激臭として強いストレスになる傾向があるともした。そして、「生体の健康リスクを考慮し、マスクにハッカ油を使用したお客様との触れ合いをお断りさせて頂く場合がございます。ご了承ください」と告知している。
この貼り紙を紹介した投稿は、大きな話題を集め、7000件以上もリツイートされている。ツイッター上では、過去には、猫カフェのアカウントも、同様な内容の投稿をしていた。
ハッカ油を塗ったマスクは、ミント特有のスーとした清涼感があるとして、コロナ禍の中で人気が出ているようだ。
大手メーカーの健栄製薬は、公式ツイッターで、マスク外側のアゴ部分にハッカ油を1滴垂らすか、水で薄めたハッカ油を吹きかけるかすれば気分爽快になれるとPRしている。ただ、刺激が強いのでつけ過ぎに注意し、体温を下げる効果はないので水分補給も同時に呼びかけている。
一方、ペットを飼っている場合は、同社公式サイトのコラム「ハッカ油を安全に使うためのルール」で、ネコはハッカ油の成分が苦手なため、ネコがいる空間にはハッカ油を使わない方がよいと注意を促している。
ネコなどへの危険性がありうる理由について、健栄製薬の学術情報部は18日、J-CASTニュースの取材に次のように答えた。
「精油などを分解する代謝の能力がなく、肝不全になる可能性も」
「ハッカ油は、メントールという成分が精油の中に溶けています。そのメントールか精油の影響で、一般的に、ネコなどによくないと言われています。ネコなどは、精油を代謝する機能がないと言われていて、体外に排出して無害化できないのかもしれないですね。しかし、ネコなどに影響があったという実例は、こちらに寄せられていません。人への使用を想定していますので、動物についての情報が不足しており、科学的な根拠が明確になっていないのが現状です」
ネコなどペットへの影響について、猫の病院シュシュ(東京都江戸川区)の獣医、長濱理生子さんは8月18日、取材にこう話した。
「量にもよりますが、ネコは、ハッカを原料としているものはダメですね。精油ほどではありませんが、メントールもダメだと言われています。人と違って、内臓でこれらの物質を分解する代謝の能力を持っていません。分解できないと、ハッカ中毒を起こして、肝臓が悪くなると言われており、肝不全になる可能性もあります。臭いもしますので、呼吸不全も2次的に起こりうるでしょう」
ハッカ油を使ったマスクでネコなどと触れ合うことについては、長濱さんはこう指摘する。
「おとなしいネコですと、マスクをなめたりしますので、万全を考えるとこうしたマスクはあまりよくないと思います。ハッカ油を飲ませたり、なめたりするとネコの体に残ってしまいます。だいたいのケースは、吐いたりするのですが、最悪死ぬこともあると思います。うちでは、ハッカ油が原因のケースは聞いていませんが、アロマなどの香りで体調を崩したネコの診察はありましたね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)