漫画作品が「トレース(無断複製)」被害に遭ったと、ボーイズラブ(BL)作品を扱う海王社のコミック誌「GUSH」が2021年8月17日、公式サイト上で報告した。
それによると、被害に遭ったのは、GUSHレーベルから出された野萩あきさんのコミックス「幸福は君のとなりに」だ。
トレース漫画がツイッターに投稿され、その同人誌が発売予定だった
この作品は、結婚式当日に花嫁に逃げられて、友人の家に転がり込んだ主人公が2人暮らしを始める、といった流れで展開するストーリーだ。2017年6月に電子書籍が発売されている。税抜きで1冊639円。
公式サイトの報告によると、作品の本文をトレースした漫画がツイッター上で勝手に投稿されていることが21年4、5月にかけて発覚した。
この人物は、トレースした漫画を自分の作品として同人誌を発売する予定だった。ツイッターに投稿したのは、同人誌の販売を促進するためだったという。
海王社が確認したところ、トレース漫画は、キャラクターの顔と髪の毛以外のページ全体のほか、書いた文字まで野萩さんの作品と一致していた。同社では、この人物と連絡を取り、ツイッター上の投稿と同人誌発売の停止を求めた。その結果、トレース漫画の投稿や発売は取り下げられ、この人物から謝罪文が届いた。
ネット上では、トレース漫画でもこの人物の作品と誤解が広がると推察されることから、同社は、この人物にツイッター上で経緯を説明するよう促した。しかし、この人物は、プライバシーを理由にツイッター上での説明を拒絶した。そして、交渉の結果、トレース行為を二度と行わないことを条件にして、サイト上での報告という形に落ち着いた。
最近では、他でも同様なケースが多数見受けられるとして、同社は、「いかなる理由に関わらず、トレースした著作物を無断で公表、発売する行為は、著作権の侵害行為に該当します」と警告した。そして、「著作者の権利を守ることは極めて重要であり、漫画文化のさらなる発展に寄与していきたいとの考えから、今後とも弊社は毅然とした対応で注意喚起を行ってまいります」と結んでいる。