ボクシングのWBO世界バンタム級タイトルマッチが2021年8月14日(日本時間15日)、米カリフォルニア州カーソンで行われ、王者ジョンリル・カシメロ(31)=フィリピン=が、前WBA世界バンタム級レギュラー王者ギジェルモ・リゴンドー(40)=キューバ=を2-1の判定で下し4度目の防衛に成功した。
金平会長「リゴンドーの手数が圧倒的に少なかった」
注目の一戦はリゴンドーがフットワークを駆使し、カシメロが追いかける展開に。カシメロは前に出ながら圧力をかけるも自慢の強打は空を切るばかりだった。一方のリゴンドーは手数が少なく、試合途中にブーイングが飛ぶシーンも。試合は結局、大きな見せ場もなく最終のゴングを迎えた。
世界屈指のテクニシャンを破りバンタム級戦線に踏みとどまったカシメロ。ボクシングの専門家はこの試合をどうみたか。J-CASTニュース編集部は協栄ジムの金平桂一郎会長(55)に話を聞いた。
カシメロ、リゴンドーともに有効打が少なく、盛り上がりに欠いた一戦について金平会長は「ファンの人からみたら内容が最悪だったと思います」と切り込み、次のように語った。
「リゴンドーの感覚としては、打たれてないし自分のパンチが結構当たっていたので勝っただろうと思ったのではないでしょうか。リゴンドーはアマチュアで長くやってきたせいかもしれないが、自己ジャッジが強く、自分にポイントが来ていると思っていたのかもしれません。いずれにせよリゴンドーの手数が圧倒的に少なかったことは間違いない」(金平会長)
カシメロ「次はドネア、最後にイノウエだ」
金平会長は勝者となったカシメロに関しては「テクニックの稚拙さが改めて浮き彫りになった」と指摘し、「ちょっと相手に動かれると何もできない。スピードがあるわけでもないし、テクニックがあるわけでもない。新しい側面を見せたわけでもない。フラストレーションがたまる試合をやって本人も確実に勝ったと思っていないはず。この試合で何がわかったかといえば、井上(尚弥)選手が飛び抜けているという事実です」と持論を述べた。
カシメロはリングインタビューで今後の展開について「リゴンドーは終わり。次はドネア、最後にイノウエだ」と吠えながら中指を立てた。
カシメロをプロモートするMPプロモーションのショーン・ギボンズ氏は地元フィリピンメディアのインタビューで次戦について言及。「私たちはドネアと彼のすべてのファンを黙らせたい」と語り、WBC同級王者で同胞のノニト・ドネア(フィリピン)を次戦の対戦候補に挙げた。
当初カシメロはドネアと統一戦を予定していたが、カシメロ陣営がドネア夫人を中傷するようなコメントを発したことなどからドネア陣営が試合をキャンセル。ドネアに代わりリゴンドーに白羽の矢が立った。
金平会長「ドネアは力を取り戻しつつある」
カシメロ陣営の青写真では次戦でドネアに勝利し、その次にWBA、IBF王者・井上尚弥(28)=大橋=を見据えているが、金平会長は「ドネアとやってもカシメロはかなわない」と断言し、その理由を説明した。
「リゴンドー戦でまともにパンチを当ててないので評価の上がりようがありません。凡戦に付き合ってしまった。そういう意味で言えば、左と右の違いはあるが、カシメロがドネアに勝つというイメージがわかない。ドネアは経験豊富ですし、カシメロがどう出てもなんとかしてしまう。ドネアは力を取り戻しつつある」(金平会長)
また、金平会長は仮にカシメロが井上に挑んだとしたら「井上選手にいいカモにされるでしょう」と指摘し、「ドネアほどの脅威もない。パワー、体の大きさもない。なにひとつカシメロが勝っているところがない。これでは井上選手にはかなわない」と断言した。
ベルトを守ったものの、KO予告もむなしく見せ場を作れなかったカシメロ。試合後は相変わらずの調子で挑発的な言葉を発したが、金平会長は「井上選手にとってバンタム級に敵がいないということを再認識した試合でした」と振り返った。