気象庁のウェブサイトが2021年8月14日、アクセス集中で一時的に閲覧しづらい状況となった。
同庁によれば、「過去にないアクセス」数を計測したとみられ、根本的な原因の解明を進めている。災害時の脆さが露呈した形だが、防ぐ術はなかったのか。
年間アクセス数は79億PV
気象庁は15日、前日 12 時 40 分頃から同庁のウェブサイトが一時的に閲覧しづらくなる不具合が起きたと発表した。各地での記録的大雨でアクセスが集中したためとみられる。
緊急措置としてシステムを増強し、15日時点では正常に閲覧できるようになった。しかしアクセスが集中すると、同じ事象が再び発生する恐れがあるとして、国土交通省(https://www.river.go.jp/index)やNHK(https://www.nhk.or.jp/kishou-saigai/#tutorial)の防災情報ページを案内している。
気象庁のサイトでは、危険度分布や気象情報、防災情報など命に直結する情報を発信している。今年2月にリニューアルし、情報発信を強化していた。アクセス過多を原因とした大規模サイトダウンは、刷新後では今回が初となる。
気象庁の公表資料によれば、1日で約1800万、特に台風接近時などは5000万ページビュー(PV)を超えることもあるという。19年度のアクセス数は79億PVを数えた。
「堂々と気象庁予算の増額を要求すべき」
実際にどれほどのPVがあったのか。気象庁情報基盤部情報政策課は16日、J-CASTニュースの取材に、現在把握を進めているとし、「過去にないアクセスを見込んでいる」と答えた。
同庁では、アクセス数が急上昇した2019年10月の台風19号時を目安(セキュリティーの観点から実数は非公表)に、負荷に耐えうる設計にしていたという。「コンテンツデリバリーネットワーク」(CDN)と呼ばれる負荷分散サービスを導入し、システムの障害対策を講じていた。
今回の事象に、SNSでは「災害時こそ閲覧できないと困る」と再発防止を望む声が少なくない。気象予報士で民間気象会社ウェザーマップ会長の森田正光氏は「このさい、堂々と気象庁予算の増額を要求すべきだと思います」とツイッターで提言し、背景に予算不足があると暗に指摘した。
気象庁の2021年度予算は514億円。2000年度からは約256億円減った。国民1人あたり約400円で、皮肉を込めて「コーヒー予算」とも呼ばれる。
2020年9月には、サイト上で広告枠の販売を始めた。中央省庁では異例ともいえる取り組みで、運営経費に充てる狙いだ。しかし、不適切な広告が相次いで見つかり、ユーザーにあわせて自動表示される「運用型広告」から、事前審査のうえで掲載できる「純広告」への切り替えを迫られた。約2億4000万円の広告収入を見込んでいたが800万に激減した。
気象庁の担当者は「令和元年東日本台風(台風19号)時にアクセスが多かったという実績に基づいて、必要な性能、予算を確保できたため、予算不足ではないと認識しています」との見解を示す。広告収入減少の影響についても「特にないかと思います」と否定した。
再発防止策については「調査結果によって必要な措置を講じる意向です。アクセス状況の解析を進め、根本的な原因に対処していきます」と話す。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)