海外旅行ガイドブック「地球の歩き方」が、続々と新刊を発行し、コロナ禍で必死に生き残ろうとしていると、ツイッターで話題になっている。今後の見通しについて、宮田崇編集長(43)に話を聞いた。
2021年9月で創刊42年目を迎える同書は、新型コロナウイルスの感染が広がる前は、年間発行部数800万部を数年間キープしていたという。
「世界のグルメ図鑑」は、アマゾンのジャンル別ランキング1位に
これは、出版不況が続く中では異例のことだ。しかし、2020年に入ってコロナ禍に見舞われると、海外旅行が難しくなって苦境が続いた。
同年1月30日には、中国での取材を止め、政府が初の緊急事態宣言を出した4月には、海外取材を禁止するまでになった。部数も落ちて、出版を手がけていたダイヤモンド・ビッグ社からは11月、学研グループに事業譲渡されることが発表された。現在は、ガイドブックと同名のグループ出版社が編集している。
苦境の中でも、「地球の歩き方」編集部は、奮闘を続けた。
東京五輪の開会式で読める本にしようと20年7月に発売した「世界244の国と地域」は、売れ行きが好調だった。コロナとは関係なく企画されたが、巣ごもりの中でも情報を届けられるかもしれないと考え、このガイドブックを手始めにして、「旅の図鑑シリーズ」を始めた。
21年3月には、第2弾として、「世界の指導者図鑑」「世界の魅力的な奇岩と巨石139選」「世界246の首都と主要都市」の3点が刊行された。そして、7月26日発売の「世界のグルメ図鑑」は、アマゾンの図鑑・事典・年鑑ジャンルで8月11日にランキング1位になるほどになった。
同12日には、「世界のすごい巨像」「世界のすごい城と宮殿333」の2点が発売され、シリーズは拡大を続けている。
「海外取材できるようになれば、通常版を順次改訂していく」
さらに、通常版として初めて国内を特集した20年9月発売の「東京」が好評で、「旅好き女子」のためのガイドブック「aruco」でも東京版が読みたいという声が多かったため、arucoが10周年を迎えた機会に、もう一度五輪で注目されるであろう東京に焦点を当て、「aruco東京」だけでなく、東京でも楽しめる海外をテーマに「東京で楽しむフランス」「東京で楽しむ韓国」「東京で楽しむ台湾」の計4点を21年7月に同時発売した。
ただ、コロナ禍にあって、海外に取材に出られない状況に変わりはない。
宮田編集長は、その状況をこう話す。
「日本に帰国してから14日間の自主隔離がありますので、現在は取材を止めていますが、解除がいつになるかを見ながら、各国の通常版(ガイドブック)を順次改訂していくことになると思います。コロナ後は書籍と共存するアプリやメディア、デバイスも検討していますが、書籍の発行を止めることはないです。また海外旅行ができるようになっても、旅の図鑑シリーズやarucoの東京で楽しむシリーズなどの企画は続け、幅広く事業を展開していきたいと思っています。これからも地球を歩き続ける予定です」
なお、「地球の歩き方」の公式ツイッターでは8月12日、次のように読者に呼びかけた。
「ここ数日SNSで地球の歩き方をたくさん取り上げていただきありがとうございます。今後どうなるの?という投稿が多数ありましたが、旅行再開後、旅人のみなさまに新しいガイドブックをお届けすべく地球の歩き方は改訂準備を進めております。今後も世界を歩き続けます。もう少しお待ちくださいね~!」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)