北朝鮮の朝鮮中央テレビが、東京五輪の会期が終了してから競技の様子を放送するという珍しい事態が起きている。過去の大会では、会期が始まってから数日後に競技の様子を流してきたのとは対照的だ。北朝鮮が新型コロナ対策を理由に東京五輪に参加しなかったことが影響しているとみられる。
現時点で放送されたのは女子サッカー2試合。北朝鮮でもサッカー人気が根強いことを反映したとみられるが、今後、他の競技が放送されるかも焦点だ。
ロンドン、リオは会期中に毎日放送していた
朝鮮中央テレビが初めて東京五輪の様子を放送したのは、2021年8月8日の閉会式から2日後の8月10日。70分間にわたって女子サッカーの英国対チリ戦を流した。翌11日にも女子サッカーのブラジル対中国戦を放送している。いずれも、画面に簡単な得点表示が入る程度で、実況や解説は入っていない。両試合は20日ほど前の7月21日に開催。この2試合がなぜ放送の対象に選ばれたのかは不明だ。なお、女子サッカーはカナダとスウェーデンが決勝に進出し、カナダが初優勝している。
過去の五輪に比べると、放送までのタイムラグが大きくなり、頻度も減っている。韓国メディアによると、12年のロンドン五輪では、開幕2日後の7月29日から、閉会式翌日の8月13日まで毎日試合を放送。それ以降も、10月2日まで散発的に放送された。
16年のリオ五輪でも、開幕4日後の8月9日から閉会式3日後の24日まで毎日、五輪関係の話題を放送した。
放送の減少は北朝鮮の不参加が影響しているとみられる。北朝鮮は21年4月5日、体育省が運営しているとみられるウェブサイト「朝鮮体育」を通じて、「世界的な保健の危機から選手たちを保護するため」として、東京五輪の不参加を発表していた。夏季五輪の不参加は、1988年のソウル五輪以来33年ぶりだった。
北朝鮮での放送権を持つのは韓国SBS
その後、北朝鮮は五輪について沈黙を続けた。唯一といっていい反応が、東京五輪の聖火リレーのルートマップに島根県の竹島が日本領として掲載されたことに関するもので、
「われわれの固有の領土を強奪するために神聖なオリンピック運動の理念と精神も汚す日本スポーツ界の破廉恥さが、極に至っている」
などと、組織委などを非難する北朝鮮オリンピック委員会の談話を7月17日に国営メディアが報じていた。
北朝鮮がどのように映像を入手したかも不明だ。ただ、国際オリンピック委員会(IOC)の11年の発表によると、韓国のSBSテレビが18年の平昌、21年の東京、22年の北京、24年パリの4大会について、韓国と北朝鮮での放送権を獲得している。過去の大会では、SBSがアジア太平洋地域の放送局が加盟する国際組織「アジア放送連合」(ABU)を通じて北朝鮮側に放送権を提供したことが報じられており、今回も同様のルートで提供された可能性がある。
リオ五輪では、北朝鮮はウエイトリフティング、体操、射撃、卓球でメダルを獲得している。サッカー以外にも、これらの競技が放送される可能性もありそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)