2021年8月8日に行われた東京五輪の閉会式では、宝塚歌劇団から団員20人が参加し、国旗掲揚に合わせて国歌「君が代」を斉唱した。
当日まで、また閉会後も歌劇団は出演に関して公式に発表することは一切ない参加だった。一方で事前に出演の可能性が報じられたことを受け、次回2024年のパリ五輪に絡めたファンからの期待感もあった。パリこそ、タカラヅカの得意分野だったからだ。
「週刊文春」の報道で演出予想も
閉会式では花組:柚香光さん、星組:礼真琴さん、宙組:真風涼帆さんの男役トップスター3人を中心に選抜の団員20人が、団員の正装である緑の袴に着物を合わせた装いで登場し「君が代」を斉唱した。
テレビで中継された国歌斉唱場面は、普段タカラジェンヌを見慣れていないとみられる視聴者には新鮮に映ったようだ。「歌がすごく上手かった」「(閉会式の中で)一番良かったのは宝塚の君が代」など、舞台の外でも「清く正しく美しく」のモットーにたがわぬ印象を残した。
事前に8月5日発売の「週刊文春」(8月12・19日合併号)で宝塚歌劇団生徒から閉会式に参加する計画があると報じられると、ファンの間では演出内容も予想されるようになっていた。次の夏季五輪は2024年にフランスの首都パリで開催。パリ、あるいはフランスを描くのは宝塚の「十八番」で、東京からパリにつなぐ閉会式は願ってもない好機だったのだ。
レビュー・シャンソン・ベルばら...フランスとの切っても切れない縁
宝塚とフランス・パリの縁はとても深い。戦前にはフランスのレビューをいち早く取り入れ、日本でのレビューのパイオニアとなる。演目の中でシャンソンも輸入され、国内でのシャンソン普及にも貢献した。1974年には池田理代子さんのマンガ「ベルサイユのばら」を上演し大ヒット、以後人気演目として定着する。創立から現代にいたるまでパリを舞台にした、あるいはフランスのエンタメに影響を受けた演目は枚挙にいとまがない。偶然ながら8月2日まで宝塚大劇場で上演され、21日から東京宝塚劇場で上演予定の宙組公演のショー「Délicieux!-甘美なる巴里-」もパリが舞台のショーである。
「ベルサイユのばら」にちなむシーンが見られるか、あるいは豪華な衣装や羽根をまとってスターが活躍し華やかなショーが展開されるかもしれない、というファンの期待もあったものの、直接パリにちなんだ演出は見られず、中継のNHKでもパリとの縁は伝えられずに出演は終わった。
国歌斉唱でタカラジェンヌらしく凛としたたたずまいを視聴者と大会関係者に見せられたものの、宝塚が最も得意とするフランス風のステージも見てみたかった、というのもファンの心残りかもしれない。
(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)