【連載】MUTEKI DEAD SNAKEのBUCHIAGARU!! music
メジャーデビューからわずか3年、一気にスターダムへ駆け上がった「Official髭男dism」。いまの日本のポップスシーンで、最も注目を集めているバンドといっていいだろう。
ヒゲダンといえば、「pretender」「I LOVE...」といったヒット曲に代表されるように、ラブソングのイメージが強い。そんな彼らが2021年5月に発表した新曲「Cry Baby」が、「印象変わった」「雰囲気が違う」などとネット上で注目を集めている。
まるでプログレッシブ・ロックのようだ、といった声もあるこの新曲。プロの目から見て、どこがどう凄いのだろうか。音楽作家のMUTEKI DEAD SNAKE氏に解説してもらった。
サビの転調が生まれた意外なきっかけ
大人気の漫画「東京卍リベンジャーズ」がアニメ化され、その主題歌として現在話題になっているOfficial髭男dismの「Cry Baby」。僕はアニメを観た時にはじめて聴いたのですが、その時はサビの転調の衝撃に「これはまたすごい曲をリリースしたな・・・」と思いましたし、同時にヒゲダンが今の日本の音楽業界でトップに君臨する理由のようなものも同時に感じ取れました。
◆すさまじい転調の嵐にBUCHIAGARU!!
これはほとんどの人がそうなのではないかと思うのですが、「Cry Baby」を聴いてまず最初に思ったのが、サビの転調、すさまじいな・・・ということです。
転調する楽曲は沢山ありますが、その中でもこちらの楽曲の転調のすごいところは、一般的にポップスの作曲では一番キャッチーにするであろうサビの途中で、自然に転調するのではなく、誰もが明らかに気付く形で転調させていること。それでいて、聴いた人にかっこいいと思わせたことです。
サビの途中で転調する楽曲と聴いて思い浮かぶのは水樹奈々さんの「ETERNAL BLAZE」や、映画の主題歌として大ヒットした英歌手・Limahlの「The Never Ending Story」が思い浮かびますが、両曲とも音楽的に美しい流れといいますか、聴き馴染みのある形で転調しています。
「Cry Baby」の転調について、作曲されたヒゲダンの藤原聡さんのインタビュー記事を読んだのですが、もともとは間違えてピアノを弾いてしまったのがきっかけになったと、東京卍リベンジャーズ作者の和久井健さんとの対談記事の中でおっしゃっていました。
確かに作曲をしていて間違えてピアノを弾いてしまうことはあると思うのですが、それを採用するかしないかという選択をする際に、「間違えて弾いたフレーズ、なんか変だけどかっこいいから使っちゃおう!」ってあまりならないと思うんですよね・・・笑
これだけ売れていて、しかも大人気アニメのタイアップというタイミングで「これは自分がかっこいいと思うからOK!」と安心感のないものを採用できるメンタリティがすごいと思いますし、それで名曲として世の中に認知させることに成功している、ということが本当にトップアーティストだなと感じました。