あと一歩届かなかった。だが、その一歩が大きな差にも感じさせられた。U-24日本代表は2021年8月3日、東京五輪サッカー男子準決勝で強豪のU-24スペイン代表に延長戦の末、MFマルコ・アセンシオに一瞬の隙を突かれて失点し、0-1で敗れた。
コンディションが整わなかった三笘薫
スペイン代表のメンバーを見ると、スペインリーグや欧州のトップリーグで活躍する選手がズラリと並ぶ。司令塔のMFペドリを筆頭に足元の高度な技術でボールを回し続ける。
日本は終始、主導権を握られたが、それでもオーバーエイジのDF吉田麻也、DF酒井宏樹、MF遠藤航を中心に相手の攻撃を阻止し、GK谷晃生もスーパーセーブを連発し、決定機を幾度も防いだ。FW林大地は得点こそなかったが、前線からのチェイシングとボールキープで貢献。攻撃を司るMF堂安律、MF久保建英もフィジカル、テクニックで決してスペインに見劣りしていなかった。
「細部のクオリティーがスペインの方が上でしたね。林はよくやったと思いますが、決定力があるFWがいたらまた違っていたかもしれない。ただ、日本の選手たちは力を出し尽くしたと思います。残念なのは三笘ですね。コンディションが最後まで整わず、守備の部分でも周りとかみ合っていなかった。堂安、久保と共に、個人の力で局面を打開できる貴重な選手だけに、スペイン戦でベンチ外だったのは本人が一番悔しいと思います」(スポーツ紙サッカー担当記者)
海外でプレーしている堂安、久保と並び、MF三笘薫はこのチームで中心選手として期待されていた。Jリーグの川崎フロンターレで入団1年目の昨年に13得点をマーク。トップスピードに入っても繊細なボールタッチが乱れず相手を一気に抜き去る。シュート技術も高く、王者・川崎の中心選手として大きな輝きを放った。東京五輪直前の21年7月にはイングランド・プレミアリーグ、ブライトンへの移籍がメディアで取り沙汰された。
堂安や久保と2列目で多彩な攻撃を展開するはずだったが...
だが、今回の東京五輪ではここまで1試合も先発出場がない。6~7月に出場したアジア・チャンピオンズリーグで右太ももの張りを訴え、代表合流後もなかなかコンディションが上がらない。攻撃陣は2列目に右で堂安、中央で久保が全試合スタメン出場している。左を主戦場にする三笘はこの2人と多彩な攻撃を展開するはずだったが定位置をつかめず、川崎でチームメートだったMF旗手怜央、名古屋グランパスのMF相馬勇紀が起用されている。
「三笘は準々決勝のニュージーランド戦で延長戦から起用されましたが、目立った活躍はできなかった。何とかしようと必死さが伝わってきたけど、悩みながらプレーしているようにも見えた。今回のチームでの立ち位置を象徴しているようにも感じました。森保監督も三笘の能力を高く評価していましたが、スペイン戦でベンチ外を決断したのは仕方ないと思います。使いどころを考えると優先順位が低かった」(前出のサッカー担当記者)
スペイン戦でピッチの選手たちが必死の形相で戦う中、スタンドで観戦する三笘がテレビのカメラに抜かれた場面があった。真剣な表情で仲間を見つめていた眼差し。何を思っただろうか。準決勝で敗れた日本代表は6日、東京五輪の銅メダルをかけて3位決定戦でメキシコと戦う。