9人組アイドルグループ・Snow Manが2022年春公開予定の実写映画「おそ松さん」に主演することが2021年8月3日に明らかになった。
赤塚不二夫さんの人気マンガ「おそ松くん」を原作として、主人公の六つ子が成人した設定で2016年にアニメが放送されると人気作品となった「おそ松さん」、これを実写映画としてSnow Manが演じることになり、ネット上には様々な反応が沸き起こった。
ジャニーズアイドルと深夜アニメの組み合わせに賛否もあったが、実は双方のカルチャーの接点を意外と見出すことができ、ファン心理も似通っているのかもしれない。過去の事例をもとに探ってみたい。
「聖闘士星矢」「花より男子」...ジャニーズとマンガの距離は近い
Snow Manの「おそ松さん」実写映画版の配役はおそ松:向井康二さん、カラ松:岩本照さん、チョロ松:目黒蓮さん、一松:深澤辰哉さん、十四松:佐久間大介さん、トド松:ラウールさんである。そしてオリジナルキャラクターとしてエンド・クローズ・ピリオドの3人が登場し、エンド:渡辺翔太さん、クローズ:阿部亮平さん、ピリオド:宮舘涼太さんという配役になった。
ファンからの様々な反応がネット上に投稿されたが、「SMAPの聖闘士星矢を思い出す」というものもあった。これは車田正美さんのマンガ「聖闘士星矢」を1991年にSMAPが演じた舞台化作品である。当時6人グループだったSMAPがメインキャラクターを演じたミュージカルで、マンガ・アニメ・ゲームを舞台化する「2.5次元舞台」のはしりとも言われる作品だ。まだ駆け出しのSMAPであったが男性アイドルが舞台、それもマンガ原作のものを演じることは異例で、良くも悪くもファンに強い印象を残した。
舞台に限らず、マンガ原作のドラマ化作品でジャニーズ事務所タレントが主演するケースなら過去に何度も例がある。嵐の松本潤さん主演の「花より男子」(2005年/TBS系)、大野智さんの「怪物くん」(2010年/日本テレビ系)、Kinki Kidsの堂本剛さんの「金田一少年の事件簿」(1995年/日本テレビ系)、関ジャニ∞の丸山隆平さんの「地獄先生ぬ~べ~」(2014年/日本テレビ系)などだ。特に松本さんの「花より男子」は続編そして映画版が制作されるほどの当たり役になった。
これらと違うのは、「おそ松さん」がもともとは深夜アニメで、二次創作などをたしなむオタク層の女性ファンが非常に多いことである。「おそ松くん」のギャグ要素に加え、成長した六つ子同士の関係性をめぐる想像をかき立てるような描写や下ネタもあり、アイドルであるSnow Manがどこまでアニメの空気感を表現できるか、キャラクターと演者双方のイメージを損なってしまわないかを心配する向きもある。
推すファンの心理は似ている?
しかし、見方によってはジャニーズファンがメンバーを応援する姿勢は「おそ松さん」などのファンとも似通っているのではないか、と指摘する論者もいた。音楽プロデューサーのヒャダインさんや、マンガ家の久保ミツロウさんである。かつて2人がレギュラー出演していたトーク番組「久保みねヒャダこじらせナイト」(フジテレビ系)2016年4月2日放送回で、ヒャダインさんは「おそ松さん」がヒットした理由について「一見すると同じように見える集団の中に個性を見つけ、それを愛でることに喜びを見出しています」と分析、これがアイドルファンの応援心理にも共通していると論ずる。すると久保さんも同意し、キャラクター同士のちょっとした関係性の描写が女性人気を巻き起こしたと話す。さらにキャラクター同士の関係に惹かれる心理の原点はジャニーズにあるとも久保さんは力説していた。
グループで活動するSnow Manは、ステージを離れたオフでは自由に馴れ合っている様子を見せる。バラエティ番組のちょっとした瞬間、あるいはYouTubeのSnow Man公式チャンネルでも様々な動画でその姿を見ることができ、フリーダムに企画を考え先輩後輩の区別なくフランクな空気で互いをイジりあっているところは確かに「おそ松さん」の六つ子の関係に近いのかもしれない。このようなメンバー同士の関係性にもファンは応援したくなるポイントを見出している。
実写映画版の菅原大樹プロデューサーは制作にあたって
「彼らの公式YouTubeチャンネルを拝見する機会があり、そこで見せる無邪気なやり取りや、お互いのことを想っている様子は見ていて本当に微笑ましくて、まさに『兄弟』そのものだなと感じました。もちろん笑いのセンスもある皆様ですので、彼らとなら『おそ松さん』を実写化出来ると確信しました」
とコメントしている。人数は9人と6人で異なるが、グループの持つ雰囲気が「おそ松さん」の六つ子に似ているとの発想が本作の実現に至ったのなら、Snow Manとおそ松さん双方のファン心理を損なわない、コメディタッチで楽しませるものが期待できるのではないだろうか。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)