JR東日本などの電車の乗務員室に、「熱中症予防でマスクを外すことがあります」といった内容の貼り紙が掲げられ、ネット上でも話題になっている。
マスクを外すのは安全のためにも関わらず、クレームが多いのだろうか?JR側に、貼り紙を出した理由などを取材した。
「マスク警察向けにここまでしなきゃいけないのか...」
東京都内を走るJR中央線では、運転士の姿も見える乗務員室の窓ガラスに、「お知らせ」とした貼り紙が貼ってある。そこには、次のように記されていた。
「熱中症予防のため乗務員室内で水分を補給することや、マスクを外して業務を行うことがあります」
この貼り紙については、ツイッター上を調べると、2020年夏ごろからすでにJR埼京線などでも話題になっていた。JRばかりではなく、私鉄やバスなどでも同様な貼り紙があったとの報告も出ている。
ただ、運転士らがこうしたことをするのは当たり前ではないかとして、JR側が貼り紙をした理由について、様々な憶測が流れている。
「マスクをしないで運転しているだけでクレーム言う人がいるんですね」「ロボットじゃないんだからさ、それぐらい大目に見てほしいよ」「マスク警察向けにここまでしなきゃいけないのか...」
お知らせの下には、緊急連絡などで携帯電話を使うことや光の反射を防ぐため夜などはカーテンをすることについての貼り紙もあり、「そのうち乗務員室の下半分シールだらけになるんじゃ」との声も出ていた。
ツイッター上などを見ると、確かに、運転士らへのクレームにあたる投稿がいくつか見られた。
「客にはマスクしろと言いながら乗務員は乗務員室だからなのかマスクしてない」「運転台にペットボトルあるぞ、通報しないのか」などで、運転士らの写真などを晒すケースすらあった。
貼り紙をしたのは、こうしたクレームに対処するためなのだろうか。
「社員間の感染防止のため、乗務員室ではマスク着用を基本にしている」
JR東日本の広報部は21年7月28日、J-CASTニュースの取材に対し、クレームがあったのかについては明言しなかったが、「乗務員がマスクを着用した際の熱中症防止の観点から昨年7月以降に、当社の在来線全車両の乗務員室背面に貼付しています」と貼り紙をした理由を述べた。
運転士らのマスクについては、「社員間の新型コロナウイルス感染防止を目的として、乗務員室ではマスク着用を基本としています」と説明するとともに、「体調に異変を感じたときやその兆候を感じたときは、速やかにマスクを外すことも併せて指導しています」とも答えた。
実際に熱中症になった運転士らがいたかについても明言しなかったが、熱中症対策については、マスクを外すことの他に、「水分や塩分を携行し、補給や体温調節などは確実に行うこと」にも留意するように指導しているとした。
マスク着用で運転士らが熱中症になるケースは、実際に起こっているようだ。
愛媛新聞の20年8月15日付記事によると、JR四国では、同年7~8月にかけて、運転士がマスク着用も原因とみられる熱中症にかかったケースが2件あり、列車の運行を一時見合わせる事態にもなった。
また、電車でなくバスのケースになるが、東海テレビの21年7月24日付ウェブ版記事によると、乗客10人ほどを乗せた名古屋市バスが電柱に衝突する物損事故があり、運転士がマスクをしていたかは記事では分からないが、熱中症になった可能性があるという。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)