西洋建築のエッセンスを図録に詰め込んだ「世界の名建築解剖図鑑 新装版」(エクスナレッジ)が、建築関係者以外の層も興味を持つほど話題を呼んでいる。
古代から現代に至るまで西洋建築とはどんなものか、豊富な図版資料も交えて細部に至るまで濃密な情報を詰め込んでおり、各種創作の参考として期待を集めていた。
「幅広い用途に本書を活用していただける」
7月19日に発売された「世界の名建築解剖図鑑 新装版」は建築史家のオーウェン・ホプキンス氏の著作を訳したもの。発売前からイラストやマンガを創作するファンの間でじわじわとツイッターで取り上げられ始める。本書の精緻な描写と情報量が、創作の参考になりそう、というものだ。
西洋建築中心ではあるが、2000年以上前の古代ギリシャの神殿から中世・近世の聖堂・城塞、近現代の公共建築に至るまで遠景・近景を駆使し、細かな装飾や壁面の違いに至るまで解説を加えたものとした。既に8月上旬の第3刷が決定済みだ。
取材に応じたエクスナレッジの編集部も、本書の価値をこう解説する。
「西洋建築を、建築様式や構造、ディテール、素材など様々な切り口から解説し、収録しています。解説は全て写真やイラスト、図面に基づいて記載しているので、視覚的に内容を理解することができます。そのため、『あの形の窓の名前は?』『教会でよく見るあの壁の模様は?』などの疑問に対しても逆引き的に調べられる点が最大の特徴だと思います。古代ギリシャの神殿から中世・近世の大聖堂、教会はもちろんですが、現代の建築まで網羅して収録しているので、幅広い用途に本書を活用していただけると考えています」
「狙い通りの反響をいただけて大変嬉しく思っています」
もとは建築史の資料的価値の方を重視して出版されたが、正確かつ重厚な情報量に意外な方面からも話題になった。新装版である本書は2013年に旧版を出版して以来8年ぶりの刊行だったが、旧版刊行時と比べると、メイン読者層である建築専門職以外にも知名度は上がっている影響もあるのでは、と編集部は話していた。
「西洋建築史を学んでいる方はもちろんですが、写真を中心として解説していますので、一般の方にも広く読んでいただきたいです。例えば観光で訪れた建物への理解を深めるためのガイドとしても活用でき、また、イラストやCG作品の背景を制作される方や、小説を書かれる方に資料として活用していただければと思っています。写真やイラストから先行して建築の部位・用途・素材・様式などの名称を知ることができる上、英語名も併記しているので、インターネットで検索する際にも役立てていただければ、と考えています」(編集部談)
装飾・ファザード・柱など建築様式に関する教養も深めることができ、「多方面のオタクに優しい」と評判の本になった。今回の新装版のネット上での反響については、こう喜びを表している。
「元々弊社月刊誌『建築知識』が、特集によっては、資料に使える!と創作活動をされている方から反響をいただくことがあったため、本書も是非そういった層の方に届いてほしいと思っていました。SNS投稿をきっかけにして、狙い通りの反響をいただけて大変嬉しく思っています。また、この本を入口として、建築分野に興味をもっていただける方が増える(そして書店の建築ジャンルの棚へ足を運んでいただける...)と嬉しいなと思います」