青森の4人組アイドルグループ「りんご娘」のリーダー・王林さん(23)。津軽弁で繰り広げる天然トークを武器に、地上波バラエティでも活躍中だ。
雑誌「日経エンタテインメント!」(日経BP)の調査「タレントパワーランキング2021」では、女性アイドル部門で5位にランクイン。ももいろクローバーZや坂道グループのメンバーが上位をほぼ独占する中、メジャーアイドルと遜色ない活躍ぶりを示す。
地上波での活躍を受けて東京での仕事も増えている王林さんだが、忙しい日々を送るモチベーションは「青森のため」であることは揺るがないようだ。2021年7月中旬のオンラインインタビューに応じた王林さんの津軽弁トークに、にじみ出る郷土愛の深さを思い知らされた。
(聞き手・構成/J-CASTニュース編集部 大宮高史)
「びっくりだらけです!」
――「タレントパワーランキング」女性アイドル部門で5位と、着実にお茶の間で人気の存在になっているようですが、このランキングはご存じでしたか?
こんな調査があるなんて全然知らなくて...応援してくれているファンの方々から教えてもらってランキングを知りました。どんな人達が私のことを挙げてくれたんだろうって、びっくりだらけです。
――それだけ、都会でテレビを見ている人たちの中でも王林さんに興味を持つ人がすごく増えたということだと思います。
私の芸名の「王林」ってりんごの品種の名前なんですけど、この芸名をきっかけに青森にお住まいでない人でも、知ってくれるようになったかも。
――「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ系)「ラストアイドル」(テレビ朝日系)に出演して以来、キー局のテレビへの出演機会がすごく増えていますね。
最初は、りんご娘の知名度が上がればいいなと思って出ていました。その後、本当にいろいろなジャンルの番組に出させてもらえるようになりました!そこではりんご娘だけじゃなくて青森のこともPRしたいと特産を知ってほしいと思って出るようになりました。私が出ることで「王林ってリンゴがあるんだ」って青森のことを少しでも覚えてもらえればという気持ちでいます。
――ちなみに、一番知ってほしい青森の文化って何でしょうか?
やっぱり、私たちのグループ名で、結成のコンセプトにもなっているリンゴです。県外の皆さんは、リンゴ=青森のイメージはあっても品種とかはご存じないことが多くて。
例えば「王林」は黄緑色のリンゴなんですけど、県外だと「まだ熟してないリンゴ」みたいに思われることもあって、誤解されると悲しくなっちゃいます。
だから活動を通じてもってリンゴもことも知ってもらえれば、と。リンゴといえば赤のイメージが強いですけど、赤いリンゴの代表格は「ふじ」だったりします。でも黄緑色の王林も、ふじと一緒にスーパーに並んでいたりするので、私をきっかけに食べてみてくれるとうれしいです。
「実はアイドルがやりたいわけでなくて...」
――テレビでは1人で出演していることが多いですが、「りんご娘」のメンバーとしては、グループのどんなところを知ってほしいですか?
歌やダンスはもちろんなんですが、実はアイドルが目的なわけではなくて、青森を発信する方法として、「りんご娘」の活動の中でいろいろなことに挑戦しています。私たちは歌とダンスで青森を広めたいと思っているグループで、歌の中でも三味線の音とか食べ物などを盛り込んでいるんですよ。
――確かに皆さん個人でモデルや映画でも活躍されていますね。楽曲の方も桜・津軽弁・縄文時代の遺跡群など青森の文化をイメージしつつも、格好いいダンサブルな曲はローカルアイドルという先入観を打破してきますし、地元の「通」なスポットで撮影されたMVの映像美も見ごたえがあります。
ありがとうございます。どんなサウンドでも、青森のことを曲に込めているので、「これ面白そう!」って興味を持ってもらえたらうれしいです。
――歌といえば、王林さんは「THEカラオケバトル」(テレビ東京系・21年3月21日放送)でも歌唱を披露したこともあります。バラエティ番組でのイメージが強いですが、もっと歌やダンスも見てほしいのに...と思ったりすることはないですか?
うーん...本当は王林として出るよりも、りんご娘としてパフォーマンスができるようになりたいという願いもあります。だけどりんご娘としても、都会の皆さんに認めてもらえる日がくると思うので、その時のためにどんなことも頑張ろうと思っています。
コロナで「半農半芸」を実践中
――一方で、都会での活動から刺激を受けたことは?
「空を探さないと無いんだ」って、東京や大阪のビルの多さにびっくりしました。見える空の範囲が全然違って、青森だと「空に包まれてる」って感覚だったんです。岩木山があってリンゴ畑があってという当たり前に見えていた風景も青森にしかないんだっていうのが、都会に出て最初に実感したことかもしれません。
――そうして青森と都会を往復する日々でしたが、去年からのコロナ感染拡大で、地方と都会の関係はギクシャクしたものになってしまった、とも言えます。不要不急の移動の自粛が叫ばれたりなど...ご自身の仕事にも大きな影響があったものと思います。
そうですね。私たちも去年20周年のツアーを企画していたんですけどできなかったり...。東京での番組収録も数か月参加できない時期がありました。でも今、イベントができなくなった分余った時間を使って農園を作ったり、農家のお手伝いに行っているんですよ。農家は1年間ずっと何かしらの作業があるのでお手伝いをさせてもらっています。また今年の春くらいから私たちの農園ではリンゴや枝豆、トウモロコシなど野菜も育てています。事務所(リンゴミュージック)の社長さんも実はこういう「半農半芸」を目指していたと聞きました。
――新しいことにもチャレンジしつつ、この21年3月には大学も卒業されました。
そうなんです。忙しい日々でしたが本当に人に恵まれて助けていただいて。りんご娘自体は私が加入する前からずっと青森で活動していたグループなので、地元の方々からは「青森のために頑張っているグループ」として見守っていただいて、子どもに接するように応援していただいています。スタッフや地元の友達、青森の皆さんのそういった暖かさに支えられてきました。
青森の魅力は「ナチュラルにあること」
――本当に青森愛があらゆるお話から伝わりますが、地元とはいえそれほどまでに青森がお好きな理由、青森に魅せられる理由は、一体何でしょうか?
「ナチュラルにあるもののすばらしさ」かな。りんご娘としての活動の中で青森県のいろんな場所を回らせていただいて、その度に青森のいろんな文化が好きになります。それに、テレビのお仕事などで県外に行くたびに、青森がどんどん好きになるんです。
例えば東京だと美味しいお店やおしゃれな建物がたくさんあります。そういう都会の人たちが作り上げてきたトレンドや文化もすごいですけど、青森にはそういうものは少なくて、自然ばかりかも。でも自然ばかりの生活の中で、私たちの周りにごく当たり前にある自然と文化――リンゴ畑や岩木山や言葉の訛りもそうですし、伝統工芸やお祭りなどの文化。そういう身の回りにあるものが素晴らしくて、青森にしかないこれらのすばらしさを発信したいなと思っています。
例えば弘前公園のさくら祭りも全国レベルではまだ知られていないかもしれないし、弘前の「ねぷた」と青森の「ねぶた」の違いも知らない人がいるかも。でも、青森ではもしかすると当たり前すぎて気づかないかもしれないこれらの魅力を私が発信して、地元の人達の自信にもなりたいです。
――都会と青森、アイドルとバラエティタレントなどマルチに活躍しながらも、これまでもこれからも、王林さんのモチベーションの源は「青森」ですね。
そうです。そして私の活動を通じて青森の空気を感じていただいたら、いつか青森を訪れてみてください。今はちょっとコロナがありますが、テレビなどで見られる私の言葉遣いやアピールしている青森のことを通じて、お茶の間でも青森にいる気分になってもらえたらと思っています。
王林(おうりん)
1998年4月8日生まれ。青森県弘前市出身。2013年3月に姉妹グループ「アルプスおとめ」から昇格し「りんご娘」に7期メンバーとして加入。2017年「ラストアイドル」(テレビ朝日系)に出演し、17年10月から18年6月まで番組内ユニット「Good Tears」を兼任する。テレビ・ラジオの他にモデルとしても活躍中。りんご娘は21年3月31日に23thシングル「JOMON」をリリースし、7月21日には4thアルバム「Eternity」を発売予定。