手足3本失った男がYouTubeで与える「勇気」 開設から1年、彼はなぜ発信を続けるのか

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人生は「線路」だと思っている

山田千紘さん
山田千紘さん

   YouTubeチャンネルは2021年7月24日で開設からちょうど1年。チャンネル登録者は10万人を超えた。ここまで順風満帆ではなかった。それでも「間違いなく言えるのは、自分自身がこの1年で大きく成長したということです」と山田さんは胸を張る。

「僕は誰かに勇気や元気を与える目的でYouTubeをやってきたけど、苦しかった時、僕が逆にいろんな人から勇気をもらっていました。今この活動をできているのは、動画を見てくれている一人一人のおかげなんだと、この1年で改めて気づきました。僕は何様だったんですかね。自分がすごいわけでは全くないのに、一時偉そうに『俺が発信しなきゃいけないんだ』って独りよがりに思っていたのかもしれません」

   7月は大きなイベントが重なった。12日には、東京五輪・パラリンピックの聖火ランナーとして立川市のセレモニーに参加した。半生をつづった自著『線路は続くよどこまでも』(廣済堂出版)を刊行し、23日から順次、書店に並んでいる。書籍のタイトルは早くから決めていた。そこには強い意志が込められている。

「自分が線路に落ちて電車にひかれたから、というのもありますが、それだけでなく、人生は『線路』だと思っているんです。20歳まで健常者の線路を通ってきた中で、本当にいろんな人に出会ってきました。通ってきた場所は『駅』。小中高校、大学、バイト先、職場。線路を進んでいくと数多くの駅があり、駅ごとにいろんな出会いがある。僕が『電車』だとしたら、駅で新たに人を乗せ、また線路を進んでいきます。

20歳の時に本物の線路に転落して、僕の人生は脱線しました。それまで走っていた線路は消えてしまい、違う方向へと向かう線路に変わりました。僕は事故の当初、変わった線路を進もうとしなかった。でも、脱線した自分の電車にまだ乗ってくれている人がいた。それに気づいて、新しい線路を進み始めることができました。

手足が3本なくなり、新しい線路になったおかげで、訪れるはずのなかった駅で、会うはずのなかった人と出会えました。医療従事者の方、障害のある方、手足を切断している方、義足のメーカーさん、職業訓練校の皆さん、就職した会社の皆さん、YouTubeでチャンネル登録してくれる方。以前の線路と、今の線路で出会ったいろんな人が、僕の電車には乗っている。

その1人1人のおかげで、僕は前に進めています。まだまだ線路は続くし、新しい駅も通る。新しい出会いも待っている。だから僕の線路はずっとどこまでも続くんです。僕が線路に落ちて気づいたことを、いろんな人に伝えたいし、知ってもらいたい。みんなは手足を切断しなくても済むから」
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