手足3本失った男がYouTubeで与える「勇気」 開設から1年、彼はなぜ発信を続けるのか

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「何を撮ればいいのか分からなくなった」空白の3か月

山田千紘さん
山田千紘さん

   活動資金を確保するため動画に広告はつけているが、YouTuberになりたいわけではない。普段は航空関連会社のサラリーマン。一般採用で入社し、フルタイムで働いている。動画が伸びなくても生活費には困らない。YouTubeは、あくまで自分の思いを届けるための場として活用していた。だが20年末ごろから、動画投稿に迷いが生じた。

「何を撮ればいいのか分からなくなりました。『やらなきゃ』とプレッシャーを感じて、苦しかったですね。動画が伸びなくて『視聴者が見たいものとは違うのか。もう分からねえ』と頭を抱えることもありました。見てくれている人の気持ちに思いが及ばなくなっていました。数字にとらわれてしまったんでしょうね」

   年が明けても迷いは消えない。どんどん自信がなくなっていった。「一度離れよう」。YouTubeもツイッターもインスタグラムも、2月末の投稿を最後に更新が途絶えた。

「約3か月、YouTubeやSNSから離れました。でも結果的に、その休息が良い方向にはたらきました。高く跳ぶ時は一度しゃがむのと同じで、人生を見つめ直すきっかけになったんです。自分と向き合えたことで、進むべき方向が見えてきました」

   空白の3か月で、何に気づいたのか。

「視聴者が増え、再生回数も伸びていくにつれ、『求められている。結果を出さないと』というマインドになっていました。苦しかった時は『週1本動画を上げる』とか目先のことしか見えていませんでした。

投稿を休んで振り返りました。YouTubeは、1人でも多くの人に自分のありのままの姿を届けたい、見て良かったと思ってくれるものを作りたい思いで始めました。いろんな人を勇気づけたい、元気づけたいと思っていただけで、YouTuberになって稼ぎたいわけじゃない。なのに何やってたんだろうと気づきました。YouTubeはあくまで自分の思いを伝えるための手段だったのに、いつの間にか動画投稿自体が目的化してしまっていたんです。

5月に投稿を再開してからは、ちゃんと目的を意識して動画を作るようになりました。仮に100再生でも、100人が見てくれたことに意義を感じられるようになりました。苦しかった時は、1万再生でも『1万人にしか見られてない。何が悪かった?』と数字ばかり気にしていました。それって完全に商売でやってたってことですよね。

だから空白の3か月で、本来の目的に立ち返ることができたのが大きかったですね。一度離れたことで、自分の心をリセットできたんだと思います。追うものが数字ではなく、人になればいい。今はそういう気持ちで動画を届けています」
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