「ありのまま」だからこそ伝わるものがあると思います
「僕の動画を見てくれた多くの人に、勇気や元気を与えたい。そして、手足がない子供たちの希望になりたい。それが僕の役割だと思っています」。山田さんは、自分がYouTubeで発信する理由を強調する。そう思うようになった背景には、先天性四肢切断の障害がある作家・乙武洋匡さんの存在があった。雑誌の企画やYouTubeチャンネル上で対談を果たすなど、直接のつながりもある。
「入院していた時、手足が3本ない中で、自分の人生のビジョンが想像しづらかったんです。前向きにはなっていたけど、僕に何ができるのか、不安が多かったんです。その中で、乙武さんの存在は大きかった。
『五体不満足』という本、事故の前は全く興味なかったんですよ。でも子供の頃、学校で少しだけ読んだことはありました。改めて思い出してみると、乙武さんやっぱりすげえなと思います。手足4本ない中でいろんなことにチャレンジしているし、笑顔を絶やしてない。いろんなメディアに出て交友関係も広い。障害がある身からすると勇気が沸く。問題もいろいろあったけど、乙武さんの存在を知って勇気や元気をもらってきた人は数多くいると思います。
自分が目指すべき姿って、こういう『勇気や元気を与えられる人間』になることなんじゃないかと思いました。未来の子供たちに『なんだ、自分は手が1本ないけど、手足3本ない人がこんなに頑張ってるんだったら、もっと頑張ろう』と思ってもらえるような、そんな存在になりたいと強く思うようになったんです」
発信で大事にしているのは、「作った自分」ではなく「等身大」でいること。「『ありのまま』だからこそ伝わるものがあると思います」。その思いは視聴者の心にも届いている。動画にはいつも数百件単位でコメントがつく。「応援してます」「勇気をもらえました」「前を向けそうです」。そんな言葉を目にするたびに、「誰かのためになっているんだ」と実感する。
視聴者は老若男女幅広い。それぞれ事情も異なる。手足がない子供を持つ親もいれば、医療の道を志す学生もいる。手足が3本ない日常を伝える山田さんのもとに、年齢も立場も障害の有無も超えて、数多くの人がコメントを寄せるのはなぜなのか。
「僕は『右腕と両足がなくなっただけ』という捉え方をしています。ネガティブに捉えることはいくらでもできます。でも前向きに捉えれば、まだ左腕がある。しゃべれる。聞ける。見える。そのことへの感謝がある。
当たり前だって思うかもしれないけど、当たり前の大事さなんて気付かない人がほとんどだと思います。僕も健常者だった20歳まで、利き腕があったり歩けたりすることのありがたみを日々感じていたかと言ったら、感じていません。けがをして、身をもって初めて気づきました。
僕は失うものがでかすぎた。でも3本失った僕が言い訳せずに生きているんだから、みんな言い訳できないでしょう? 前向こうよ? そんな思いも発信しているつもりです。僕の動画は、障害者とか健常者と関係なく、誰にでも響く内容だと思っています。実際に鼓舞された人、共感してくれる人がいるかもしれません。それで、いろんな人がコメントをくれるんだと思います」