韓国政府系のシンクタンク、統一研究院が行っている北朝鮮に関する世論調査で、5年後の南北関係が「今より悪くなる」とみる人の割合が、「今より良くなる」とみる人の割合を初めて上回った。
p> トランプ政権で繰り返された米朝首脳会談や南北首脳会談でも北朝鮮の核問題は進展せず、膠着(こうちゃく)状態が続いていることが原因だ。9割が北朝鮮は核を放棄しないと考え、6割が北朝鮮に無関心だとも回答。あきらめムードが広がっている。「無関心で、期待すること自体をあきらめる傾向が強まった」
調査は14年に初めて行われ、今回が10回目。21年4~5月、1003人を対象に面接聴取法で行われ、結果が7月16日に公表された。「今後5年間で南北関係はどう変わるか」という質問では、「悪くなる」と答えた人が20.3%で、前回20年11月調査の15.1%から5.2ポイント上昇したのに対して、「良くなる」と答えた人は前回の16.0%から3.0ポイント下回って13.0%。18年にこの質問を設けてから初めて「悪くなる」が「良くなる」を上回った。報告書では、この背景を
「南北関係の膠着(こうちゃく)状態が続き、北朝鮮が前向きに対話に乗り出す可能性が見えない状況が影響している」
と分析。ただ、この設問に対する回答では「変わらない」と答えた人が前回68.9%、今回66.7%と、3分の2を占めている。報告書では、この点を
「南北関係への否定的な見方というよりも、むしろ無関心で、期待すること自体をあきらめる傾向が強まったとみられる」
とみている。
実際に、「北朝鮮が核兵器開発を放棄すると思うか」という質問には、90.7%が「しないと思う」。42.5%が核の脅威について「心配」で、18.6%が北朝鮮の核が自分の人生に「影響を与える」とした。
さらに、北朝鮮に「関心がない」と答えた人は61.0%にのぼる。過去の「関心がない」人の割合を見ると、北朝鮮によるミサイル発射が相次ぎ、南北関係が緊張した17年が54.2%。米朝首脳会談が行われて南北関係も改善された18年は52.4%だった。当時よりも「関心がない」人が増えていることになる。
若い世代ほど「無関心度」が高くなる
報告書では、
「一般的な認識と異なり、ほとんどの韓国人は、南北関係や北朝鮮問題に大きな関心を払っていない」
若くなるほど無関心の割合が高く「IMF世代」(1981~90年生まれ、主に30代)では68.3%、「ミレニアル世代」(91年以降生まれ、主に20代以下)では74.1%にのぼった。最も年齢が高い「戦争世代」(1950年以前生まれ、主に70代以上)は52.9%だった。
北朝鮮との対話への関心が完全になくなっているわけではなさそうだが、それでもハードルは高い。「バイデン大統領は金正恩総書記と首脳会談を行うべきか」という設問には、69.0%が前向きな回答をしている。ただ、69.0%の内訳は、「無条件に(北朝鮮との対話を)再開すべき」19.4%だったのに対して、「非核化で実質的な前進があれば再開すべき」が49.6%。半数近くが、実質的な進展がなければ対話すべきでない、という立場だ。さらに、「北朝鮮が完全に核兵器を放棄しない限り再開すべきではない」と答えた人も25.6%いた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)