大会エンブレム、「トートバッグ」騒動で外堀埋まる
2012年11月には新国立競技場のデザインにザハ・ハディド氏の案が採用されたが、15年7月に安倍晋三首相(当時)が白紙撤回した(提供:Zaha Hadid Architects/EyePress/Newscom/アフロ)
大会エンブレム盗用騒動もあった。15年7月、クリエイティブディレクターの佐野研二郎氏のデザインが大会の公式エンブレムに選ばれたが、直後にベルギーのリエージュ劇場のロゴのデザインに酷似しているとの指摘が出た。
佐野氏はベルギーの劇場ロゴを制作時に参考にしたことはないとして、記者会見で「アートディレクター、デザイナーとして、ものをパクったことは一切ない」などと反論した。だが、佐野氏がデザインし、サントリーがプレゼント企画で配布していたトートバッグにも盗用の疑惑が噴出。サントリーはバッグの配布を中止し、佐野氏の事務所はウェブサイトで、スタッフが他人のデザインをトレースしていたとして謝罪した。
この件以外にも様々な盗用疑惑が指摘されて外堀を埋められた形になり、組織委は9月に佐野氏デザインのエンブレムの使用中止を発表。エンブレムの選考をやり直し、野老朝雄氏デザインの採用が決まったのは、16年4月のことだった。
トップをめぐる不祥事も目立った。仏捜査当局が18年12月、東京五輪招致をめぐる贈収賄の容疑で、竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長を容疑者とする捜査を開始。竹田氏は19年1月に記者会見して汚職を否定したが、記者からの質問を受けず、会見は7分で終了。疑念が晴れないまま、竹田氏は3月、同年6月の任期満了でJOC会長を退任する意向を表明した。
21年2月には、組織委会長だった森喜朗氏が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言したことが「女性蔑視」だとして問題化。釈明会見では辞任を否定する一方で、記者の質問を「面白おかしくしたいから聞いているんだろ?」などと批判したことで世論の反発が強まった。
会見の8日後、2月12日に森氏は辞任を表明。森氏は川淵三郎氏を事実上指名し、川淵氏も一度は受け入れた。だが、「密室人事」の批判が強まると、川淵氏は一転して辞退した。組織委が検討委員会を立ち上げて選考し、橋本聖子現会長が就任した。