2021年7月23日に迫った東京五輪開会式にともなって検討されていた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪日が、見送られることになった。日韓首脳会談が実現すれば、膠着(こうちゃく)した日韓関係を打開するきっかけになるとの期待感もあったが、元徴用工や慰安婦問題で両国の態度が変わらない以上、会談をしても成果が望めないと判断したとみられる。
韓国メディアは訪日見送りを7月20日付の社説で大きく取り上げ、日韓関係の深刻さを一様に嘆いた。ただ、訪日が見送られたことの責任の所在については、保守系紙は比較的中立的に論じたのに対し、左派氏は日本側を非難するトーンが強く、評価が分かれている。
東亜日報「今回もチャンスを生かせなかったが...」
文氏の訪日見送りは、青瓦台(大統領府)の朴洙賢(パク・スヒョン)国民疎通首席秘書官が7月19日に発表した。文氏によると、日韓両政府は「両国間の歴史懸案に対する進展と未来志向の協力の方向性について意味のある協議」を行ってきたが、「首脳会談の成果とするには、まだ不十分」で、「その他の諸状況を総合的に考慮」した結果の訪日見送りだという。
日韓関係をめぐっては、相馬弘尚・駐韓国総括公使が韓国のテレビ局、JTBCとの昼食会で、文氏の対日外交姿勢について「マスターベーションをしている」などと発言。発言内容をJTBCが7月16日に報じて問題化していた。ただ、朴氏は相馬氏の発言には触れていない。
だが、韓国メディアでは、この発言が文氏の訪日見送りに影響を与えたとの見方も出ている。例えば保守系の東亜日報は20日付の社説で、
「青瓦台として満足のいく会談の成果が出るか不透明なうえ、在韓日本大使館総括公使の妄言の波紋まで重なり、訪日する大義名分も低くなったと判断し、訪日を見送ることにしたと思われる」
と分析。今後については
「今回もチャンスを生かせなかったが、将来、両国関係に大きな傷に残さないために、今後も転換点を見つけるための努力を怠ってはいけない」
などと論じるにとどめた。