水漏れ・鍵修理...「レスキュー商法」被害急増 ネット広告巧みに利用、弁護士団体がGoogleに改善申入書

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   水漏れや鍵の修理でのトラブル急増を受け、被害者を支援する弁護士8人がグーグル社に対し、事態改善を求める申入書を送付していたことが分かった。

   悪徳事業者の多くは、「リスティング(検索連動型)広告」と呼ばれる仕組みを通じて集客しているといい、審査の厳格化などを求めている。

  • 「検索汚染」対策が急務(写真:AFP/アフロ)
    「検索汚染」対策が急務(写真:AFP/アフロ)
  • リスティング広告のイメージ
    リスティング広告のイメージ
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「見積もり無料」と宣伝→実は有料

   トイレ、水漏れ、冷暖房設備の修理、鍵交換、害虫駆除――。暮らしのトラブルをめぐり、高額請求をされたり、杜撰な対応をされたりといった「レスキュー商法」が後を絶たない。

   国民生活センターによれば、13年度には1787件の相談が寄せられ、以降は1871件、2081件、2390件、2763件、3386件、3771件と右肩上がりで推移する。20年度は5880件と急増し、今年度は7月11日時点ですでに1279件を数える。

   相談情報部の担当者は、「最近では、インターネット広告を入り口としたトラブルの相談が増えています。昨年度は相談数の約4割が該当しました。今年度は5割に迫る勢いです」と話す。

   具体的には、次のような被害が報告されている。

「『見積もり無料』の広告を見て蛇口の水漏れを確認してもらうと、50 万円の見積書を提示された。その日中に要否を判断するよう迫られ、断ったところ、勝手に蛇口を取り外した作業費として2万円を請求された」
「ネズミ駆除を依頼して、業者から口頭で『見積もり金額は40万円だが、実際にやってみないと正確な代金はわからない』と言われた。契約書を取り交わさずに、作業後に請求された50万円を支払ったものの、完全に駆除できていなかったことが判明した」
「鍵を紛失してしまい、インターネットで『地元の鍵業者』と検索して一番上に表示された業者に電話をした。自宅に来た作業員からは『特殊な鍵なので5万円かかる』と伝えられた。しかし、別の業者にも依頼すると2万円で済んだ」

リスティング広告が「さらなる被害を拡大」

   京都弁護士会の弁護士8人は21年1月、「レスキュー商法被害対策京都弁護団」を立ち上げた。昨年8月ごろから、府の消費生活センターへの相談件数が急増したためで、被害者救済に動いている。

   悪徳事業者の多くは、インターネット検索の上位に自社サイトなどを掲載できる「リスティング広告」という仕組みを利用しているという。

   そのため、弁護団は21年5月中旬に検索最大手の米グーグル日本法人に申入書を送った。

   グーグルの広告ポリシーでは、

(1)広告主様のビジネス、商品、サービスに関する情報について隠蔽または虚偽記載を行ってユーザーを欺くこと
(2)広告やユーザーとのやり取りで、不正確なお店やサービスの名前、または宣伝対象となるビジネスを明確に表していないビジネス名や類似のビジネスと区別しにくいビジネス名を使用すること
(3)支払いモデルやユーザーが負担する全費用を明確にわかりやすく開示していない

などを禁止している。中には「料金を見積もり額から引き上げて、脆弱な状態のユーザーや切迫した状況にあるユーザーに不当な請求を行う」とレスキュー商法を念頭に置いたとみられる項目もある。

   それにもかかわらず、明らかに違反している広告が少なくなく、申入書では「(レスキュー商法には)貴社のリスティング広告などが極めて効果的に利用され、さらなる被害を拡大させており、その状況について、憂慮しています」と訴え、審査の厳格化や事後確認を求めている。

グーグル社の見解は

   弁護団の一人で、京都大法科大学院客員教授(消費者法)の住田浩史弁護士は7月14日、J-CASTニュースの取材に、グーグル社からの回答はいまだないと明かす。申入書では、レスキュー商法を繰り返す特定業者の広告停止も要請していたが、「停止されていないと思います」と肩を落とす。

   住田氏によれば、レスキュー商法は昔から行われていたものの、近年では営業手法が変化しているという。

「以前はマグネットが広告媒体になっていました。ポストに投函して冷蔵庫などに貼ってもらい、トラブル時に電話させる、というのが主流でした。今はトラブルが起きたら携帯やパソコンで調べる人が多いでしょう。リスティング広告で上位に出てくる事業者は信頼できる、グーグルからお墨付きをもらっていると思ってしまう人も少なくないようです。広告と認識できていない消費者もいます。

水回りの修理であればすぐに来てもらわないといけないですし、じっくり検討する時間もないので、検索上位に出てきた業者に依頼してしまう。レスキュー商法とリスティング広告は非常に相性が良いわけです」

   グーグル社には、巨大プラットフォーマーとしての責任があるとの考えだ。

「リスティング広告は広告市場でかなりの比重を占めています。インターネットの検索で上位に出てくるということはサービスやモノの品質が高い証だ、として信頼する消費者は多いから、広告効果が高いのです。グーグルはそれをわかっているわけですから、それに応じた調査義務がある。もし知っていて放置しているのであれば責任が生じると考えます」

   2020年のネット広告費は1兆7567億円で、手法別ではリスティング広告が38.6%と最多を占めた。公正取引委員会の調査では、2019年度のリスティング広告の市場シェアはグーグルが70~80%と独占的な地位にある。

   被害に遭わないためにはどうすれば良いのか。

   住田氏は「検索結果が汚染されている状況なので、基本的には広告枠や検索上位に出てくる業者だからといって必ずしも信用はできません。多くの費用を投じて広告出稿しているということは、その分、代金に上乗せされ消費者に転嫁されている可能性もあります」と助言し、

「インターネットで探すにしても、会社が遠方である、そもそも実店鋪があるのかどうかわからないとか、運営会社がどこかがはっきりしない業者などは、選ぶべきではありません。

また、水回りであれば、地元自治体の指定工事業者や地元の管工事業協同組合加盟業者から選ぶのがよいでしょう。その場合でも、説明がない、見積もりがないなど、不親切や不誠実な業者は、避けるべきです。もちろん、相見積もりを取ったり、近所での口コミを参考にしたりするのも有効です」

とする。

   被害に遭った場合は、特定商取引法のクーリングオフ(契約解除)が適用できる可能性があり、消費生活センターや消費者問題に詳しい弁護士への相談を勧める。クーリングオフ期間を過ぎても返金を受けられるケースもあり、住田氏は「あきらめないで欲しい」と呼びかける。

   グーグル日本法人の広報担当者は7月16日、J-CASTニュースの取材に「個別事案についてはお答えできない」として、次のように答えた。

「グーグルでは、広告をすべてのユーザーにとって安全かつ適切なものに保つために、システムによる自動評価と人による評価を組み合わせて、掲載される広告はグーグルの広告ポリシーに準拠していることを審査しています。

ポリシーには、不実表示に関するポリシーも含まれ、ユーザーを騙す目的で商品に関する情報を故意に掲載しなかったり、商品やサービス、ビジネスについて誤解を招く情報を表示したりしている広告やリンク先は禁止しています。その他の広告ポリシーにつきましてはこちらでご確認いただけます。

グーグルの広告掲載ポリシーに違反している可能性がある広告にお気づきになった場合は、こちらよりご報告いただくようお願いしています。

また、グーグルでは、ユーザーにとって安全で利便性の高い環境を構築するために、表示された広告に関するユーザーからのご意見を傾聴しているほか、オンラインのトレンドや実践手法の変化、業界標準や規制の変更についても継続的に確認しています」

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)

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