コロナ禍で「ピリピリ感」出てきた?
確かに、一昔前は死球や接触プレーを巡る乱闘が珍しくなかった。
巨人・クロマティは87年6月11日の中日戦(熊本)で死球を与えられると激高。マウンド方向に詰め寄ると、宮下昌己に右ストレートを浴びせた。西武・清原和博は89年9月23日のロッテ戦(西武球場)で死球を受けると、バットを平沼定晴に投げてヒップアタックした。
選手だけではない。「闘将」の異名を取った星野仙一監督は乱闘で輪の中心に入る。迫力満点だった。中日で指揮をふるっていた90年5月24日の巨人戦(ナゴヤ)で危険投球に抗議し、ヤジが飛んだ巨人ベンチに詰め寄ると、制止にかかった巨人・水野雄仁の帽子を吹き飛ばした。
乱闘については、「子供の前でみっともない」と批判の声が上がる一方、「真剣勝負の延長線で執念は伝わってくる」と肯定的な意見も見られる。
都内に住むヤクルトファンの男性(43)もその一人だ。「乱闘を肯定するわけではないけど、今は塁上で選手同士がニコニコ話している姿をよく見る。『ガチンコ感』がないんですよね。今はコロナのせいかそういった選手同士の交流が減って、試合もピリピリした雰囲気が伝わってくる。個人的にはこの方がいいですね」。
乱闘は推奨されるべきではないが、ユニフォームの違う選手たちが塁上で談笑する光景に興ざめする野球ファンの気持ちも理解できる。選手同士の「距離感」も熱戦を彩る上で重要な要素なのだ。