動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」をめぐり、利用者から苦情が寄せられている。退会方法が複雑との指摘で、運営会社は取材に「真摯に受け止め、改善に励んでまいります」と答えた。
利用者を惑わせるような設計は「ダークパターン」と呼ばれ、米国では法規制も進んでいる。
十数ページ遷移する必要
ディズニープラスは、2020年6月に日本で開始した。ウォルト・ディズニー・ジャパンとNTTドコモが運営し、全世界の会員は21年3月に1億人を超えた。
騒動のきっかけは、同サービスの元会員のSNS投稿だった。自身が経験した退会時のわずらわしさを6月下旬にツイッターで共有したところ、1万以上の「いいね」を集め、共感が相次いだ。
実際にJ-CASTニュースで退会を試みたところ、完了までにトップページから十数ページ遷移する必要があった。パソコン、スマートフォンいずれも同様だ。
具体的には、トップページ→FAQ(よくある質問)→キャンペーン・作品案内→アンケート→ドコモ会員向けサイト→「dアカウント」でログイン→契約サービス確認→契約内容確認→注意事項確認→同意欄にチェック→最終確認→退会完了――となる(一部省略可能、複数経路あり)。
手続きの途中には退会のデメリットが提示されるなど、思いとどまるよう促される場面もあった。
Netflix、Hulu、DAZNと比較すると...
前述の投稿者は、ドコモ会員向けサイトに遷移後、「オプションサービスのお申込み・解約」をクリックした。すると、100以上の選択肢が表示され、見つけるのに苦労したという。
投稿者は取材に、「ボタン一つで退会完了が望ましいですが、様々な事情が重なってこのような状態にあるかとは思います。せめてドコモのサイトに遷移してから何をどうするべきかの具体的な指示など、分かりやすく表示があればと思います」と答えた。
類似サービスと比較すると、Netflixはトップ→アカウントページ→退会ページ→退会完了。Huluは、トップ→アカウントページ→作品案内→アンケート→退会完了。DAZNはトップ→アカウントページ→契約内容確認→アカウント一時停止の提案→解約確認→アンケート→退会完了――だった。
ドコモ広報部は「状況は把握しております。今回の件は真摯に受け止め、改善に励んでまいります」と取材に答えた。
欧米の消費者団体が問題視
利用者の不利益となるような行動を促すサイト設計は、「ダークパターン」と呼ばれる。ユーザー・エクスペリエンス(UX、ユーザー体験)の専門家である英のハリー・ブリグナル氏が命名した。
ブリグナル氏はJ-CASTニュースの取材に、次のように解説する。
「ダークパターンとは、消費者が理解していればしなかったであろう行動などを完了させる、ソフトウェアの操作的・欺瞞的なトリックです。例えば、クリックすると『YES』と機能するボタンを、配置や色、言葉のトリックを使って『NO』に見えるようにした場合、多くの消費者が騙されることになります]
「そのため、意図せずに購入や共有をしてしまったり、利用規約に同意してしまったりすることがあります。また、自分がやろうとしたことが難しく設計されているために、し損ねることもあります。例えば、有料定額サービスを解約しようとすると、惑わせる選択肢と長い手順を迫られるケースです」
ブリグナル氏はダークパターンを12に分類し、ディズニープラスの解約フローのような設計を「Roach Motel(ゴキブリ捕獲機)」と呼んでいる。
ダークパターンをめぐっては今年1月、アマゾンの会員制サービス「Amazon Prime」の解約方法が複雑だとして、欧米の消費者団体が相次いで規制当局に苦情を申し立てた。
3月には、米カリフォルニア州が消費者プライバシー法(CCPA)にダークパターンを禁止する規則を盛り込んだ。ワシントン州でも法規制が検討されている。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)