マウンド上で首をかしげ、渋い表情を浮かべる。絶対的エースの姿には程遠かった。
侍ジャパンに追加召集で選出されたソフトバンク・千賀滉大が2021年7月6日のロッテ戦(ZOZOマリン)に登板したが、3回途中9安打10失点KO。9日には再調整のため出場選手登録を抹消された。
「無理に状態を上げようとして故障を再発するのが怖い」
千賀は4月に左足首の靱帯を痛めて以来3か月ぶりの1軍マウンドだったが、制球が定まらない。直球は最速158キロを計測したが、伝家の宝刀のフォークを含めて変化球が思うように操れない。奪三振は1つもなく、甘く入った球をことごとく痛打された。
「明らかに調整不足です。直球も球速ほどのキレがなく、変化球も浮いていた。そもそも復帰が後半戦になるという見方が多かった。
故障上がりなのに、五輪に追加召集された時は耳を疑いました。あと3週間後に迫っているが、本来の状態に戻せるとは思えない。無理に状態を上げようとして故障を再発するのが怖いです」(スポーツ紙記者)
6月16日に発表された侍ジャパンの内定選手24人は、明らかに「実績重視の布陣」だった。
開幕から度重なる故障で本来の状態ではない菅野智之が選ばれたが、今月1日の広島戦(東京ドーム)で3回持たず4失点KOを喫するなど2か月以上白星から遠ざかる。翌2日に4度目の登録抹消。コンディション不良を理由に五輪を出場辞退した。同じく巨人の中川皓太も、左第十肋骨骨折のため出場辞退を発表している。
実績重視の選考基準に疑問も
球界関係者は代表の選考基準に疑問を呈する。
「選手の名前だけで抑えられるほど国際試合は甘くない。コンディションを重視して、好調の選手を選ぶべきでしょう。オリックス・宮城大弥は侍ジャパンが3月上旬に日本オリンピック委員会に提出した1次ロースター185人の中にも入っていなかったようなので選出できないが、中日の柳裕也、西武の森友哉は選ぶべきだったと思います」
菅野、中川の出場辞退に伴い、選出されたのは千賀と日本ハムのドラフト1位右腕・伊藤
大海。5月28日の中日戦(札幌ドーム)から5連勝と好調なだけに、この決断は納得できる。
本番まで残り3週間。シーズンでの戦いが続くが、故障者が出ないことを祈るばかりだ。(中町顕吾)