東京五輪は2021年7月23日から8月8日まで開催される。無観客か有観客かが議論されているが、概ね無観客だろう。ただし、ここでの観客とは一般の人であって、大会関係者といわれるVIPではない。日本だけではなく各国の政府関係者もVIP扱いになるが、無観客の場合、はたして政治家の中にVIPとして観戦する人が出てくるのか興味深いところだ。
筆者が無観客だろうという根拠は、東京において8月22日まで緊急事態宣言が発出されるからだ。これは東京五輪中は緊急事態宣言下となる。緊急事態宣言をしつつ、その期間内の五輪で有観客というのは、マスコミの恰好の餌食になるのがミエミエなので、五輪は無観客だろうというわけだ。
といっても、筆者が、今回の緊急事態宣言を是としているわけではない。むしろ、リスク管理から見れば、かなり不合理な決定だと思っている。
高齢者の感染者数は減少
まず、東京において、新規感染者数が増加していることが、緊急事態宣言の根拠のようだ。しかし、今回の新規感染者増は、過去と比べて顕著な差がある。それは、増加がほとんど若い人により、高齢者では大きく減少していることだ。
これまでは、若い人も高齢者も同じように増えて、新規感染者増になっていたが、今回はまったく違う状況だ。これは、新型コロナウイルスのワクチン接種が高齢者にはかなり行き渡ったので、そのために、高齢者の感染者数が減少しているからだ。
いずれにしてもリスク管理の点から考えてみよう。そもそもリスクとは定量的に評価できるもので、死亡率でみよう。新型コロナによる死亡率を年齢別にみると、50歳以下では10万人あたり1人にも満たないが、50歳代2.3人、60歳代7.1人、70歳代21.1人、80歳以上78.4人だ。
一方、交通事故死亡率をみると、50歳以下で1人を若干超えているが、50歳代1.9人、60歳代2.5人、70歳代3.9人、80歳以上6.0人だ。交通事故と新型コロナとを比較すると、50歳代でほぼ同じ、50才以下では交通事故、60歳代以降は新型コロナの方がリスクが高い。
重症者、死者に着目して、より効果的な諸対策を
今回、新規感染者はリスクの少ない60歳以下がほとんどである。ちなみに、緊急事態宣言という報道がなされた7月7日、東京の新規感染者数は920人で、900人超は5月13日以来と報道された。しかし、920人の内訳は60歳未満863人、60歳以上57人。ほとんど死亡リスクのなく、交通事故よりリスクのない世代で新規感染者が占められているので、これで過度に反応することはない。
これで、緊急事態宣言を発令するのは、60歳未満では交通事故のリスクが少ないにもかかわらず、そのリスクを心配して、東京で車の運転を全面的にストップするようなものだ。
今回、若い人の新規感染者が増えていても、その人達のリスクは低いので、医療逼迫や医療崩壊の可能性は低い。若い人にとっては、新型コロナはそれほど危ないものではなく、やや強力なインフルエンザ程度のものだ。少なくとも、交通事故よりおそれるものではない。
若い人を含めて新規感染者が増加しているからというのは、あまり意味がない。重症者、死者に着目して、より効果的な諸対策を考える段階になっている。