「当店は選手村なので堂々とお酒を提供します」。東京都内の飲食店が掲出した、こんな貼り紙がツイッターで話題になっている。
赤、青、黄、緑と五輪マークのような色が付いた円弧に挟まれて、「IOC」と黒の字が入っている。国際オリンピック委員会の略称でもあるが、貼り紙では、「いつもおいシー」とルビが振ってあった。
「時事ネタを考え、オリンピックが迫っているので話題性を狙った」
その下には、「選手村へようこそ」と大きく印字され、「酒場餃子研究所」という店名が出ていた。
この貼り紙写真は、ツイッター上で2021年7月4日に投稿され、大きな反響を集めている。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、飲食店では、未だに時短や酒提供の制限などを求められ、苦しい状況だと報じられている。選手村で酒の持ち込みが認められるなど、間近に迫った五輪だけが「特別扱い」と疑問の声がネット上で相次ぐ中とあって、この貼り紙は話題になった。投稿は3500件以上リツイートされている。
「皮肉がすごい」「この手があったか?!」「居酒屋でも選手村って名前ならいいのか笑」といった声が寄せられている。
酒場餃子研究所は、居酒屋を中心に店舗展開する「S.H.Nホールディングス」(東京都渋谷区)が運営し、都内に渋谷店と中目黒店がある。
同社の広報担当は7日、中目黒店はまん延防止措置対応のため4月19日から休業しており、貼り紙は6月半ばごろから渋谷店の店内にいくつか出してあるとJ-CASTニュースの取材に答えた。
「各チェーン店では、面白いポップを出して、お客様に楽しんでいただいており、この貼り紙はそのうちの1つです。社内のデザイン部で話し合って時事ネタを考え、オリンピックが迫っているので話題性を狙いました。皮肉を効かせた要素はけっこうありますね」
「雇用を守るため」と、店の深夜営業や酒の提供を続ける
同社の高橋竜太社長(32)が社会人サッカー選手出身だけに、スポーツを盛り上げようという雰囲気も社内にあるという。「店内のテレビでオリンピック中継を流しますので、貼り紙のポップとマッチするのではないかと思っています」とも広報担当者は話した。
渋谷店は、都の緊急事態宣言などを受けて、時短や休業をしていたが、5月12日の再開から、感染防止対策を行ったうえで、翌朝5時まで営業し、酒の提供も続けている。
都の要請に従わない店が次々に出ていると報じられており、都から命令を受けても応じず、裁判所から25万円の過料を科される店も出るようになった。同社のチェーン店の中でも、要請について都から通知が来ているところもあるという。
そんな中でも、深夜営業や酒の提供を続ける理由について、広報担当者は、次のように説明した。
「初めのうちは、時短などを守っていましたが、今年に入ってから、振り切って営業するようになりました。それは、社員を100人以上とたくさん抱えていて、雇用を守るためです。アルバイトを含めれば、1000人以上にもなり、やむを得ません。時短などへの協力金は、支払いが遅いのは仕方がない部分もありますが、不平等さが正直あると思っています。家賃が月に300万円もかかる店もある中で、金額が低過ぎるのではないかと感じています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)