「インターネット広告とは大違い!」「あこぎなことしないから安心だよ!」――。「KINCHO(キンチョウ)」ブランドで知られる大日本除虫菊(大阪市)の新聞広告がSNSで反響を呼んでいる。
ネット広告にはない新聞広告の良さを訴求しながら、それと矛盾するような"仕掛け"を用意し、読者からは「そうきたか」「最後のオチにやられました」といった反応が上がっている。
「いま、いいよね。一方通行の新聞広告」
話題の広告は、2021年7月4日に読売新聞朝刊などに掲載された。「インターネット広告とは大違い!いま、いいよね。一方通行の新聞広告」とのタイトルが大々的に踊り、「新聞広告は、あこぎなことしないから安心だよ!」とアピールしている。
新聞広告とネット広告を比較し、以下8点の優位性を列挙している。
・「この広告を見て、この商品を買いたくなったかどうか教えろ」なんて言わないよ!
・「ポイントやるから個人情報よこせ」なんて言わないよ!
・この新聞広告、途中で見るのやめた人の数を数えたりしないよ!
・「この広告見たやろ、そしたらこの広告も見ろ」なんて言わないよ!
・「広告見て買ったな、そしたらもう一回買え」なんて言わないよ!
・あなたが、いつ、どこでこの広告見てるかなんて知らなくていいよ!
・この新聞広告を見た後、何をしてるか詮索なんてしないよ!
・「へぇ、こんな商品あるんだ。今度買ってみよう」...それだけで...十分だよ。
生活者にとって不快感を覚えやすい「ターゲティング」(閲覧履歴の追跡)手法などを明示することで、「オフライン広告」の良さを伝えた形だ。
しかし、上記の論調を無視するように広告下部には「デジタルキャンペーンやってます!ホームページをご覧ください。いますぐご覧ください」と呼びかけ、 https://www.kincho.co.jp/internet/daisuki/index.html へのアクセスを促している。
「まずは無視されないためにどうするか」
当該ページは、インターネット黎明期を思わせるレトロなデザインになっている。
「デジタル時代のプレミアムキャンペーン」としてKINCHO商品が並ぶ壁紙(デスクトップなどの背景)の配布をしており、ページ最下部には「お客もゴキブリも狙い撃ち!ターゲティングカンパニーKINCHO」と自社の姿勢を打ち出している。
一連の広告展開はSNSで注目を集め、「そうきたか」「最後のオチにやられました」「ホームページ面白すぎる(笑)」と好意的な反応が続出した。
大日本除虫菊宣伝部の担当者は6日、J-CASTニュースの取材に「デジタル広告全盛の昨今、そのちょっと面倒臭いと多くの方が思っているであろう部分を逆手にとり、あえて新聞紙上で遠慮なく新聞広告を褒めちぎりました。ただ、紙面を最後まで見ると、実は躍起になってホームページに誘導してるという、自己矛盾をユーモアとして捉えて頂けるような内容にしています」と意図を説明した。
ウェブページは"オチ"として用意し、「せっかく来て頂いた人に楽しんでもらえるようにと思っての内容です。まるでホームページ黎明期、インターネット1.0、懐かしきガラケー時代のような仕様にこだわり、細部まで遊んでます」とこだわりを明かした。広告効果を測る指標(KPI)は特に設けていないという。
同社はユニークな広告をたびたび制作している。昨年5月の新聞広告「もう どう広告したらいいのかわからない」は、その投げやりぶりにSNSで多くの注目が向けられた。
「広告の目的はいつも同じで、『商品の告知』をしながら『話題にしてもらって』『キンチョウブランドを好きになって欲しい』ということです。もちろん買って頂く事が一番の願いではありますが。そしていつも大切にしているのは『広告なんて誰も積極的に見ようとしていない』ということです。まずは無視されないためにどうするかを考えています」(宣伝部)