「なおエ」
米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手が活躍すると、ネット上にはたびたび、こんな書き込みが相次ぐ。「なお、エンゼルスは敗れた」を意味するネットミームだ。
「大谷さん28号!なおエ」「大谷凄いけどなおエすぎる」
大谷選手は2021年6月30日、ヤンキース戦に2番・DHで出場。3回の第2打席で3試合連続となる27号ソロをライトへ放り込み、ホームラン数メジャー単独トップに立つ。さらに次の第3打席でも、弾丸ライナーの28号2ランをライトへ放った。
大谷選手の活躍にネット上の野球ファンは「すごすぎて訳が分かりません」「これは現実なのか?」「もうどうかしてるよ」と唖然。翌日には先発登板を控えていることもあり、「ホームラン2本で明日先発て。漫画超えてる」「仕事休んでも見る価値があるかもしれん」などの声も聞かれている。
しかし、大谷選手の活躍むなしく、この日のチームは5-11の敗戦を喫した。今シーズンのエンゼルスは、主砲マイク・トラウト選手の離脱もあり、38勝41敗(ア・リーグ西地区4位)と低迷。大谷選手がホームランを打ってもチームが敗れるケースが目立つため、ネット上では「大谷は活躍してるけどエンゼルスは勝てないなあ」「全盛期の大谷がいてエンゼルスが弱いのが解せない」と嘆く声が聞かれている。
そうした中、ネット上で頻繁に書き込まれているのが「なおエ」という言葉だ。戦国時代の武将のことではない。「なお、エンゼルスは敗れた」を略したネットミームだ。大谷選手の活躍と不釣り合いなチーム事情を嘆く意味で、主に野球ファンの間で使われている。実際に大谷選手が活躍するも大敗した30日、ツイッター上で「なおエ」と検索すると「大谷さん28号!なおエ」「大谷凄いけどなおエすぎる」などの書き込みがヒットする。
由来は「なおマ」
この「なおエ」、ルーツとなっているのは、かつてシアトル・マリナーズで活躍したイチローさんをめぐる書き込みだ。01年にマリナーズへ入団したイチローさんは、MLBシーズン史上最多の262安打(04年)、10年連続シーズン200安打を記録するなど、チームの顔として歴史的な活躍を続けた。
しかしマリナーズは地区優勝した01年以降、長い低迷期に突入。イチローさんが活躍していた当時のスポーツニュースでは、イチローさんの安打量産を大きく報じた後、チームの敗戦をさりげなく伝える、という構図が定番化していた。これが「なお、マリナーズは敗れた」(なおマ)というネットミームを生み出したのだ。
日本人スターの活躍と、所属チームの低迷――。「なおエ」を使うネット上の野球ファンには、今の大谷選手とかつてのイチローさんの姿がダブって見えるのかもしれない。
J-CASTニュースの調べによると、今シーズンここまで大谷選手がホームランを打った25試合(6/30まで)のエンゼルスの勝率は4割8分(12勝13敗)。イチローさんがシーズン最多安打を記録した04年に、ヒットを打った試合のマリナーズの勝率は4割3分2厘(58勝76敗)だった。