羽田空港の国内線ターミナルで自動運転車いすの本格導入が進んでいる。2021年6月21日、第2ターミナルでデモンストレーションが報道陣に公開された。
保安検査場を抜けた直後に電動車いすの待機場所があり、座ってタッチパネルを操作すると、搭乗ゲート近くまで自動運転する。降りた後は自動で元の位置に戻る。車いす利用時の空港職員との接触を減らし、新型コロナウイルスの感染リスクを抑える効果も期待されている。
地図情報を覚えさせ、カメラやセンサーで障害物を検知して進む
導入が進んでいるのは、ベンチャー企業の「WHILL」(ウィル、東京都品川区)が開発した「WHILL自動運転システム」。重さ約70キロの電動車いすに事前に地図情報を覚えさせて走る仕組み。GPSやAIは搭載されていないが、カメラやセンサーで障害物を検知しながら自動運転する。
羽田空港では、20年7月に第1ターミナル南ウイングに初めて導入。自動運転パーソナルモビリティ(1人乗りの移動手段)が空港に導入されるのは、これが世界初だった。21年6月14日に、第1ターミナル全域、第2ターミナルの北エリアにエリアが拡大。7月下旬には第2ターミナル全域で運用が始まる。21年度末までに第1、第2ターミナルで12台ずつ設置される予定だ。
時速2.5キロは「空いているので遅く感じるかもしれませんが」
電動車いすは、保安検査場近くの「ステーション」と呼ばれる待機場所に設置。主に高齢者や、歩行が困難な人の利用を念頭に置いているが、羽田空港の国内線出発便を利用する人であれば、予約なしで誰でも無料で利用できる。運用時間は8時から20時まで。
操作はタッチパネル式。最初に現れる画面で「利用開始」のボタンにタッチし、続いて現れる「ゲート53-54」「ゲート55-57」といった行き先候補のボタンにタッチすれば車体は動き出す。目的地で降りるとカウントダウンが始まり、1分ほど経つと無人で「ステーション」に戻る。速度は時速2.5キロほど。人が歩く速度の約4キロと比べても、ゆったりとしたペースだ。空港ビルの担当者は
「空いているので遅く感じるかもしれませんが、混んできたら、そこそこスピードがあるように感じられるのでは」
と話している。1台あたりの利用者数は1日15人程度で、おおむね想定通りの利用者数で推移しているという。
全日空(ANA)の担当者は、
「『(車いす利用が)不安だ、(係員に手伝いを)お願いするのが申し訳ない』といった方に利用していただけると、もっと飛行機が利用しやすくなるのでは」
と話し、自動運転で利用のハードルが下がることを期待していた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)