沖縄の若者に広がる「基地容認論」 知事も国政野党も「辺野古中止」言うけれど...

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   沖縄戦の組織的戦闘が終結した6月23日の「慰霊の日」に糸満市の平和祈念公園で開かれている全戦没者追悼式は、緊急事態宣言が延長された影響で、2年連続で大幅に規模を縮小しての開催となった。

   2021年の式典では、玉城デニー知事が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への移設問題に言及。改めて辺野古以外の選択肢を模索するように求めた。19年2月に行われた住民投票では、辺野古建設のための埋め立てに「反対」を表明した人が7割を超え、現時点での県内世論はある程度明確だ。ただ、県内の高校生を対象に5年ごとに行われているアンケートでは、基地への「容認度」が高まっているとも取れる結果が出ており、このまま世代交代が進めば基地問題をめぐる世論が変化する可能性もある。「容認度」が高まった背景には、基地問題について具体的に学ぶ機会が少ないことがあるとの指摘もあり、基地問題をいかに教えるかも問われそうだ。

  • 米軍普天間飛行場の危険性は、どうすれば除去できるのか(写真は米海兵隊ウェブサイトから)
    米軍普天間飛行場の危険性は、どうすれば除去できるのか(写真は米海兵隊ウェブサイトから)
  • 米軍普天間飛行場の危険性は、どうすれば除去できるのか(写真は米海兵隊ウェブサイトから)

菅首相はビデオメッセージで「辺野古」言及せず

   玉城知事による「平和宣言」では、辺野古について

「日米両政府は、県を含めた積極的な協議の場を作っていただき、『辺野古新基地建設が唯一の解決策』という考えにとらわれることなく、『新たな在沖米軍の整理・縮小のためのロードマップ』の作成と、目に見える形で沖縄の過重な基地負担の解消を図っていただくことを要望する」

などと言及。改めて政府が進める計画に反対した。その後流された菅義偉首相のビデオメッセージでは、基地問題について

「沖縄の方々には、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいている。この現状は何としても変えなければならない」

などと言及したが、辺野古問題には触れなかった。国政野党の多くも辺野古移設には反対で、立憲民主党の枝野幸男代表は

「我々は、沖縄の民意を尊重し、軟弱地盤の問題などが明らかになった辺野古移設工事は中止し、沖縄の基地のあり方について見直して米国に再交渉を求めていきます」

などとする談話を発表している。枝野氏は6月14日掲載のJ-CASTニュースのインタビューで、

「私は、普天間の海兵隊の機能を米軍が維持することには全く同意なんです」

などとする一方で、辺野古の軟弱地盤を理由に、普天間の危険除去のためには別のアプローチをすべきだと主張している。

「辺野古をこのまま強行しても、10年経ってもおそらく完成していないので、普天間の危険性は除去できません」
「むしろ違うアプローチをした方が、結果的には普天間の移設は早いかもしれないという局面です」

「容認化」進むのは「基地問題について、具体的に学ぶ機会が少ないことが要因」

   そんな中で、今後の世論に影響を与えそうなのが若者の動向だ。その傾向の一つを表していると言えそうなのが、沖縄歴史教育研究会が県内の高校生を対象に、5年に1回行っているアンケートだ。最新の調査は19年11月~20年3月にかけて、県内の高校2年生、約1650人を対象に行われた。

   「沖縄に基地があることについて、どう思いますか」という問いでは、10年には「全面撤去すべき」と答えた人が24.4%いたが、15年には9.6%に減少。20年にはさらに減って8.3%になった。「整理・縮小すべき」を選んだ人は41.9%→52.4%→52.5%と推移。「今のままでよい」は15.2%→22.1%→21.5%だった。「わからない」は、16.5%→13.7%→15.7%と大きな変化はなかった。

   「全面撤去すべき」と「整理・縮小すべき」の合計で見ると、66.3%→62.0%→60.8%と右肩下がりで、調査結果の報告書では、

「若者の基地の容認化が進んでいる証であろう。基地問題について、具体的に学ぶ機会が少ないことが要因として考えられる」

と分析している。

   辺野古をめぐる問いでは、さらに「容認化」が顕著だ。「普天間基地の移設場所について、どう思いますか」という問いに対して、「国外・県外に移設すべき」と答えた人が10年は46.8%いたが、15年は36.4%に。20年には29.8%になった。「辺野古に移設したほうが良い」は3.7%→8.8%→10.2%と増加を続け、「現在のまま普天間でよい」は14.8%→20.7%→16.3%と、5年ごとに増減がある。ただ、「わからない」という回答は32.7%→36.0%→43.7%と右肩上がりだ。

   報告書では、「わからない」が増えた背景について

「こうした(基地問題が進展しないという)理不尽ともいえる現実を前に、多くの高校生が即答できず、悩んだ挙句のすえ『わからない』を選択せざるを得なかったのだろう」

などと言及。それ以外にも、(1)米軍基地の成立過程(歴史)やその役割を知らないこと(2)そのため普天間基地の危険性をよく理解していないこと(3)沖縄経済が基地依存で成り立っているという誤った認識を持っていること、などを挙げている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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